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【正論6月号】習近平と金正恩 呉越同舟の親近感 恩讐を超えて熱烈歓迎 評論家 石平

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 金正恩氏の場合は前述のように、彼の権威と権力の根源と正当性の根拠はまさに血筋にある。血統の論理が完全に定着した北朝鮮では、正恩氏は金日成と金正日の血筋を受け継いだ3代目であるというだけの理由で、彼の権威と権力は指導者層と国民から認められていて、それをことさらに正当化する必要はない。だからこそは彼は当然のように独裁者として振る舞い、北朝鮮という国を自由自在に動かすことができるのである。

 それと比べると、血統の論理とは無縁の独裁者習主席にはこのような強みはない。「血筋の強み」を頼りにできないからこそ、彼は今まで、独裁者の地位に登り詰めるために必死の努力を行って凄まじい戦いを展開してきたが、今後、独裁者としての地位を維持していくためには、彼はそれ以上の努力と戦いを続けていかなければならない。「血筋の強み」がないからこそ、習主席は今まで「力の論理」をもって独裁者としての地位を固めて来たのだが、今後、独裁者としての地位を守っていくためには彼は常に自らの「力」を誇示しあるいはそれを行使しなければならない。

 その中では習主席は常に自分の権威と権力の正当性のことを気にして、国民と指導者層に向かってそれを証明して見せなければならない。まさに自らの権威と権力の正当性の保証のために習主席は「習近平思想」なる代物を持ち出してそれを憲法にまで盛り込んだわけであるが、それでは彼は今後、この「習近平思想」の指導理念としての正当性と効き目を証明して行かなければならない。

より危険なのは、どっち?

 こうして見ると、独裁者としての習近平主席は、まさにその独裁者の地位を守っていくためには今後、終わりのない「自転車操業」を続けて行かなければならない宿命であることは明らかであるが、「血統の論理」に安住できる金正恩氏の目から見れば、このような独裁者ほど哀れな者はいないのであろう。

 しかし問題は、われわれ周辺国にとっては、この習近平氏という哀れな独裁者ほど危険な者もいない、ということである。世界有数の政治大国かつ軍事大国の独裁者となった彼からすれば、周辺国に対する覇権主義戦略を進めていくことこそが自らの独裁者としての力を誇示できる絶好のチャンスであり、大国中国の国力・軍事力を盛んに使って外交戦略上の勝利を次から次へと収めていくことこそが自分の独裁権力の正当性を証明できるもっとも有効な手段となるからである。

 実際、習主席自身が打ち出した「習近平思想」なるものの核心的な内容は、すなわち「民族の偉大なる復興」という政策理念であるが、その訴求するところは要するに、近代になってから中華帝国の失った覇主的地位と勢力範囲を回復させ、アジアと世界に君臨する中華民族の栄光なる地位を取り戻すことである。

 そして習主席からすれば、このような遠大なる政策目標の実現に向かって着々と成果を上げていくことによってこそ、「習近平思想」の偉大さと正しさを常に証明できるのであり、「習近平思想」の偉大さと正しさが証明されていくことによってこそ、彼の独裁者としての地位が常に正当化されていて、より強固なものとなっていくのである。

 もちろん、「習近平思想」の示した通りに中華民族がその「偉大なる復興」を成し遂げ、中華帝国が再びアジアを制覇した暁には、習近平主席はそれこそ、血筋だけを頼りにして独裁者となった金3世などを上から見下ろして、金王朝の血筋の始まりである金日成や中国の建国の父である毛沢東さえを超えたような偉大なる独裁者となって中国とアジアに君臨するのであろう。

 そしてそのような時こそは「血筋の強み」のない独裁者習近平の「自転車操業」が終了しても良いところであるが、このような結末は、独裁者習近平にとって幸いであっても、われわれ周辺国にとっては悪夢以外の何ものでもない。

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