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【正論6月号】習近平と金正恩 呉越同舟の親近感 恩讐を超えて熱烈歓迎 評論家 石平

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 金委員長に対する彼の歓迎ぶりはどうやら本物であって、習主席はやはり、金委員長とは意気投合していて彼のことが好きなのである。

 しかしそれはなぜなのか。60代の習主席は一体どうして、今までは自分に対しても無礼を働いたこの30歳そこそこの「若造指導者」に好意と好感を寄せているのだろうか。

 各国首脳との交流の中で、習主席と格別な親密な関係にあるのはロシアのプーチン大統領であることが知られているが、考えてみれば、習主席、金委員長とプーチン大統領、この3人の共通点といえば、やはり彼らはそれぞれ、自分の国においては独裁者としての地位を確立している点である。独裁志向の強い習主席はやはり、同じ金委員長やプーチン大統領のような独裁者に好感を寄せていて、独裁者同士として意気投合しているのである。

 その際、プーチン大統領は一応民主主義の手続きによって選ばれた大統領であるが、習主席と金委員長の2人はまさに伝統的な意味においての独裁者、人民の上に君臨する皇帝か王様のような存在である。

 世界広しといえども、今の国際社会にはこのような独裁者としての国家元首・首脳はそう多くはない。アジアでもおよそ数人しかいない。だからこそ、習主席は自分とは年齢の差が30歳以上もある金委員長に親近感を覚えて、彼のことを本心から好いているのであろう。

 実はそこにはまた、中朝関係の特別性を理解するための鍵の一つがある。この数年間、北朝鮮の金委員長がいくら暴走していても、時には中国のメンツを丸潰しにしていても、中国は決して北朝鮮のことを徹底的に追い詰めようとはしなかった。中国の北朝鮮に対するこのような甘い態度の背後には、冷徹な国際戦略上の計算がある一方、習主席個人の金委員長、あるいは北朝鮮に対する感情的要素もあるのであろう。同じ社会主義国家の独裁者としては、習主席は決して、北朝鮮の体制崩壊と金委員長の破滅をこの目で見たくないのである。

全く異なる権力基盤

 互いに意気投合しているように見える習主席と金委員長だが、同じ独裁者としては勿論、それぞれの生い立ちや政治家としての経歴は全然違うし、その寄りたつ権力の基盤はかなり異なっている。

 かつての徳川幕府3代目将軍の家光が「余は生まれながらの将軍」と豪語していたのと同様、同じ3代目の金委員長もまた「生まれながらの将軍様」である。

 金日成の孫として、そして金正日の子息として「金王朝」の3代目に指名された時から、金正恩氏はまさに北朝鮮の権力の頂点に立つ運命である。そして金正日が死去して正恩氏がその後を受け継いだ北朝鮮の最高指導者となった瞬間、彼は絶対的な権力を手に入れ、その国の唯我独尊の独裁者となった。

 その際、金正恩氏の独裁者としての絶対的権威と権力の根拠となるのは「血統」である。李氏朝鮮の時代と同様の血統の論理が最高の政治原則として確立している北朝鮮では、建国の父・金日成の血筋を受け継いだ金王朝の3代目である、というそれだけの理由によって、金正恩氏は国民からは王様か神様かのように崇められ、政権内における絶対的な権威と権力を確立できた。最高指導者に就任してから、金委員長は政権内の大物政治家や多数の軍首脳をいとも簡単に粛清できたことから見ても、この30歳そこそこの若者は権力を握った途端、まさに「生まれながらの独裁者」として振舞っていることがよく分かる。金一族の3代目であるだけで、国内ではもはや誰も彼に反抗出来ない。金日成から始まった血筋の「神聖性」こそが、金委員長の絶対的権力の最大の拠り所であろう。

 30代の若造が何の苦労もせずにして血筋だけを根拠にして絶対的な独裁者となったことは、時には権力の乱用と独裁者自身の狂気を招くような危険な一面もある。しかしその一方、独裁者となった人が冷静で合理的判断のできる人間である場合、政権の運営や政策の遂行は非常にうまくいくこともある。

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