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【いまも飛ぶ大戦機】究極の航空レシプロエンジン対決、空冷星型vs液冷V型

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 「戦闘機は速度と急降下性能が最優先」と考えるドイツ空軍やイギリス空軍などの欧州勢は、前面投影面積が小さく、機体を細身に設計できる液冷V型エンジンを多用した。片や広大な海洋での戦闘を想定するアメリカ海軍は、「まず信頼性と耐久・生存性ありき」で、空冷星型エンジン一本槍であった。そしてアメリカ陸軍は、その中庸といった位置づけである。ちなみに我が日本陸海軍は、工業技術水準の低さから、ドイツ製液冷V型エンジンのライセンス生産さえままならず、必然的に空冷星型エンジンに頼らざるを得ない……という、誠に情けない実情であった。

スピットファイアMk.Ⅸbが搭載するロールスロイス・マーリン60系は、優秀な二段二速式過給器を装備。速度向上を狙ってエンジン断面積ギリギリまで機首を絞り込んだ、典型的な液冷V型の設計技法が理解できる(Photo:Atsushi
スピットファイアMk.Ⅸbが搭載するロールスロイス・マーリン60系は、優秀な二段二速式過給器を装備。速度向上を狙ってエンジン断面積ギリギリまで機首を絞り込んだ、典型的な液冷V型の設計技法が理解できる(Photo:Atsushi "Fred" Fujimori)
F4Uコルセアなどが搭載するP&W R-2800ダブルワスプは、総排気量45.9l、複列18気筒エンジン。このように気筒を放射状に配置するため、エンジンに被弾しても回り続ける可能性が高く、生存率向上に寄与する(Photo:Atsushi
F4Uコルセアなどが搭載するP&W R-2800ダブルワスプは、総排気量45.9l、複列18気筒エンジン。このように気筒を放射状に配置するため、エンジンに被弾しても回り続ける可能性が高く、生存率向上に寄与する(Photo:Atsushi "Fred" Fujimori)

 大ざっぱに「スピードの液冷V型エンジン」、「耐久性の空冷星型エンジン」と言え、それぞれに一長一短あるわけだが、こと大馬力化に関しては、はっきり明暗が分かれた。構造的に気筒数増大が困難な液冷V型エンジンに対して、空冷星型エンジンは気筒配列を重ねることで、大排気量化=大馬力化が可能だったのだ。そのためジェット時代を迎えると、2,000馬力級止まりだった液冷V型エンジンは、急速に姿を消していった。一方、4,000馬力を越える空冷星型エンジンは、戦略爆撃機や大型旅客機などに搭載されて、しばらく生き長らえたのである。さらに山火事などで出動する消火機の一部は、現在も空冷星型エンジンを搭載しているほどだ。すなわちレシプロエンジンの究極形態が、空冷星型といえるだろう。

究極のレシプロエンジンP&W R-4360ワスプメジャーは、単列7気筒を4列重ねた28気筒(!)、総排気量71.5lの怪物星型エンジン。初期型でも3,000馬力、終局的にはターボコンパウンドを装備して実に4,300馬力を絞り出した(Photo:Atsushi
究極のレシプロエンジンP&W R-4360ワスプメジャーは、単列7気筒を4列重ねた28気筒(!)、総排気量71.5lの怪物星型エンジン。初期型でも3,000馬力、終局的にはターボコンパウンドを装備して実に4,300馬力を絞り出した(Photo:Atsushi "Fred" Fujimori)
限界が見えた液冷V型の変形型として開発された、3,000馬力級液冷H型24気筒のネイピア・セイバー。ホーカー・タイフーンなどに搭載され、それなりに運用されたが、ジェット時代を迎えると複雑すぎるゆえに自然消滅した(Photo:Atsushi
限界が見えた液冷V型の変形型として開発された、3,000馬力級液冷H型24気筒のネイピア・セイバー。ホーカー・タイフーンなどに搭載され、それなりに運用されたが、ジェット時代を迎えると複雑すぎるゆえに自然消滅した(Photo:Atsushi "Fred" Fujimori)

 【プロフィル】藤森篤(ふじもり・あつし)

 日本大学理工学部航空宇宙工学専修コースで、零戦設計主務者・堀越二郎博士らに学ぶ。30余年間、飛行可能な第二次大戦機の取材・撮影をライフワークとする。著書は「零戦五二型・レストアの真実と全記録」「現存レシプロ戦闘機10傑」(エイ出版社)など。

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