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【スポーツ通信】「あと一歩」の残酷 柔道の全日本決勝で敗れた王子谷剛志 2年後に哀歌を笑顔に変える

全日本決勝で原沢に敗れ、王子谷は畳の上に座り込んで立ち上がれなかった(福島範和撮影)
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 今は亡き柔道家、斉藤仁は能弁な人だった。

 1983年の世界選手権で男子無差別級を制し、こんな所感を残している。

 「エベレストには登ったが、まだ富士山には登っていない」

 富士の頂上には、山下泰裕という動かぬ人がいた。85年まで全日本選手権を9連覇。決勝で3年続けて山下に挑んだ斉藤は、いずれも準優勝者として栄光の引き立て役を務めている。83~85年のことである。

 88年に全日本をようやく制し、同じ年のソウル五輪で日本柔道初の2連覇を果たすその人の、意外な回り道。かつての全日本は、それゆえ世界の最高峰として仰がれ続けた。とりわけ“世界の2位”に甘んじてきた斉藤にとっては、指呼の間とも霞の向こうとも思われる、近くて遠い「峰の頂上」だったろう。

 今年の全日本(4月29日、東京・日本武道館)は「久々に見応えがあった」と、多くの関係者が認めている。リオデジャネイロ五輪銀メダルの原沢久喜と大会3連覇を狙う王子谷剛志(旭化成)の決勝は、9分を超える両者の攻防に満座の観衆が沸いた。

 決着を告げる3度目の指導が相手に与えられ、顔じゅうを涙にした原沢。勝者のインタビューが場内に響く中、汗でしとどに濡れた上半身をあぐらの上に預ける王子谷。2分、3分と経ち、なお渋面を解こうとしない敗者の横顔に落ちたものは、「あと一歩」の描き出す残酷な陰翳に他ならない。

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