【激動ヨーロッパ】民主主義は弱っているのか ハンガリー総選挙が映す危うさ
反難民・移民や強権政治で欧州連合(EU)と対立するハンガリーのオルバン首相が8日の総選挙で連続3選を果たした。圧勝を支えたのは政府・与党が一体的となり、政権寄りメディアも動員した「反移民」の大々的キャンペーンだ。東欧民主化から30年近くが経つが、そこには民主主義を「弱体化」させる危うさがはらんでいる。(ブダペスト 宮下日出男)
選挙ではオルバン氏の中道右派「フィデス・ハンガリー市民連盟」の与党連合が3分の2以上の議席を獲得。投票率も事前予想を超える約70%に上り、圧倒的な民意がオルバン氏を支持したのは事実だ。だが、この選挙に疑問を投げかける見解も出ている。
損なわれた対等な競争
「純粋な政治的議論の余地が狭められ、完全な情報に基づく有権者の判断は妨げられた」
選挙を監視した欧州安全保障協力機構(OSCE)は9日の報告書で選挙が適切に行われたとする一方、選挙活動全般についてこう指摘した。まず問題視したのは政府・与党が一体化したようなキャンペーン。街中にあふれた2種類のポスターがそれを物語る。
一つは移民とみられる行列に「ストップ」と記した政府広告。もう一つは同国出身の米投資家、ジョージ・ソロス氏と野党指導者らが並ぶフィデスのポスターで「ソロスの候補をとめよう」と訴えた。ソロス氏は難民らを援助する非政府組織(NGO)も支援しており、いずれも「反移民」がメッセージだ。