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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら〈23〉】人命第一主義に安住するな

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浅くなる日本人の思考

 今回の出来事でもっとも気になったのが、「人の命としきたりと、どっちが大事なんだ(当然、人命だろう)」という落としどころである。どうしたって昭和52年に起きたダッカ日航機ハイジャック事件を思い起こす。下手人である日本赤軍は、服役・勾留中の同志の解放を要求、これを拒否するなら人質を順次殺害すると恫喝(どうかつ)した。当時の福田赳夫首相は「人命は地球より重い」と述べ、身代金の支払いおよび超法規的措置として、収監メンバーなどの引き渡しを決断した。

 「人の命としきたりと、どっちが大事なんだ」は「人命は地球より重い」の延長線上にあるのは間違いない。人命第一主義に立った言説は、それがどんなに幼稚でも致命的な批判を受けることはない。逆にそこから外れた言説は、容赦ない罵詈(ばり)を浴びせられ、社会的に抹殺される危険性がある。それが戦後の日本社会だ。この社会においてもっとも深刻な問題は、人命第一主義に立つ者の思考はそこで停止してしまい、深化することがないというところだ。日本人の思考はどんどん浅くなっている。

 今回の落としどころも、恥ずかしくなるほど浅いものだった。もちろん人命は大事だ。それを否定しようとは思わない。酸いも甘いもかみわけた晩年のモンテーニュも、人命軽視をこんな言葉で批判している。

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