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【昭和天皇の87年】陸相と海相が激論 「もはや聖断しかない」

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 豊田貞次郎軍需相「六月中旬より空襲激化し、七月青函船撃沈され、爾来(じらい)汽車も日本海側も瀬戸内海も輸送力低下し、青函船一カ月一六万トンの石炭は一〇万トンを欠き、青森の貯炭一〇万トンを以て一時しのぎをしている。軍需工場では安全感を失い政府にも軍にも信を置かない」

 石黒忠篤農商相「食糧は非常に困難となり、飢餓の状態はやむを得ない。ことに動員兵の民家に食をあさるに至りしは、誠に寒心すべきものあり、今後の事態は大いに懸念に堪えない」

 小日山直登運輸相「鮮満(朝鮮と満洲)はもとより今後北海道との交通すら極めて困難であり、関門トンネル必ずしも保証ができない。海上の封鎖は一層強くなり、九州の輸送関係も断たれるおそれあり」……

 日本は、戦える状況ではなかったのだ。

 閣議の終盤、首相の鈴木貫太郎は、ポツダム宣言受諾にあたり国体護持のみを条件とする外相案への賛否を求めた。

 だが、大半の閣僚が賛成したものの、保障占領の拒否など4条件を求める陸相案を支持する声もあり、意見の一致をみなかった。

 もはや聖断しかない。

 閣議の散会後、鈴木は皇居へ急いだ。時計の針は、午後10時を回っていた--。(社会部編集委員 川瀬弘至 毎週土曜、日曜掲載)

【参考・引用文献】

◯外務省編『終戦史録』(官公庁資料編纂会)

○同書所収の「東郷外相手記」

○下村海南『終戦記』(鎌倉文庫)

国体護持 天皇を中心とする日本国の根源的な政治および社会秩序(国体)を保全すること。「全日本軍の無条件降伏」などを求めたポツダム宣言には、戦後の天皇の地位について明確に書かれておらず、東郷茂徳外相ら終戦派は、国体護持のみを唯一絶対の条件として宣言を受諾すべきだと訴えた。これに対し阿南惟幾陸相ら抗戦派は、国体護持に加え(1)武装解除の方法(2)戦争犯罪の自主処分(3)被占領地域の範囲-についても条件をつけるべきだと主張した。

保障占領 賠償金の支払いなど相手国に条約上の義務を履行させるため、領土の一部または全部を占領すること。第1次世界大戦では、ドイツに課せられた莫大な賠償金の支払いが滞ったため、フランスなどがライン川左岸やルール地方を保障占領した。これによりドイツ経済は大打撃を被り、戦後復興が大幅に遅れることとなった。

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