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【正論4月号】意外?実は徴兵制国家は世界の趨勢  評論家 八幡和郎

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各国の最新徴兵事情

 日本の中世において、人々は身分にかかわらず武器を携帯しており、ヨーロッパとは違う状況にあった。そこで、豊臣秀吉による刀狩りや兵農分離が行われ、その後、江戸幕府によって身分の固定化が図られた。その一方、武士は「天下泰平」のために警察能力以上の戦闘能力を失い、プロの軍隊としての機能は喪失していった。その結果、黒船来航とその後の動乱にあって、庶民を兵士に登用し、西洋式の兵法を採り入れた長州の奇兵隊が幕府軍を破った。明治新政府はその教訓をもとに四民平等の思想に基づいた徴兵制を取り入れ、その論理的帰結として普通選挙が実現した。

 一方、市民革命を経験せず、漸進主義をとったイギリスは長らく、ノーブレスオブリージュに裏付けられた貴族中心の軍人、経済的利益を得るべく志願した兵士、植民地人の傭兵に頼っていたが、さすがに国家の損失著しい両次の世界大戦では徴兵を行い、1960年まで続いた。アメリカはイギリスと同様の伝統を持っていたが、南北戦争で徴兵を導入、最後の徴兵が行われたのは1973年で、現在は停止されている。

 1970年代以降も徴兵制はほとんどの国で採用されたが、軍事の先端技術化が進むとともに、廃止する国が出てきた。徴兵制の母国とも言うべきフランスにおいても、保守系のシラク政権時の2001年に廃止され、ドイツなど多くの国がこれにならった。現在、欧州では永世中立国であるスイス、オーストリアなどでは義務兵役制が完全に維持されているが、スペイン、イタリア、オランダなど多くの国々では停止されている。ただし、必要が生じれば復活するという前提の「停止」であることに注目する必要はあるだろう。

 一方、ロシアなど旧ソ連の国々は徴兵制を維持しており、韓国や北朝鮮でも同様である。韓国では芸能人がキャリアを中断して二年の兵役に就くが、これは日本でも時折ニュースになる。中国は地域ごとの枠を志願兵で満たせない時には徴兵するという制度だが、ほとんどは志願兵でまかなわれている。インドは、現在までのところ、志願兵で事足りている。

 最近話題のフランスとスウェーデンの徴兵制復活に関しては、別稿があるようなので詳述は避けるが、背景にはウクライナ問題などをめぐって欧州と対立を深めているロシアの脅威がある。それに加えて、テロが続発する時代に国家への忠誠心を涵養、もしくは確認するための有用性が再評価されていることがある。ドイツなどでも同様の兆しがあり、トレンドとして徴兵制は形を変えつつも復活傾向にあるといえる。

欧州では左派が徴兵制を支持

 もともとフランスでは社会党や共産党が徴兵制の廃止に強硬に反対していた。革命以来の伝統に反するという考えもあったし、志願兵制はつまるところ経済的な餌で兵士を集めることであるから、貧困層がもっぱら兵士となることを避ける意味もあった。こうした考え方は米国内にもあって、リベラル派が「経済的徴兵だ」などとさかんに志願制を批判している。日本でも最近、経済的徴兵を批判する人が増えているが、それならば本来の徴兵制の導入を訴えるのが論理的だろう。また、近年は「良心的兵役拒否」が権利として認められるようになっているが、さすがに要件は厳格だ。良心的兵役拒否が一切認められない希有な例として、北朝鮮と韓国がある。女性の兵役に関してはイスラエルが有名だが、徐々に増える傾向にある。

徴兵制の流れを止めるためにこそ入隊を促すべき

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