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【赤字のお仕事】国家は「存亡の危機」なのか「存亡の機」なのか

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 校閲デスク作業中のことです。

 ある記事で、「国家存亡の危機に直面した実在の英国の首相、チャーチル」という箇所がありました。

 この中の表記、「存亡の危機」がひっかかりました。「存亡の機」あるいは「存続の危機」と直すように、その記事の載る面の校閲担当者に指摘して、出稿部の了解を得て「国家存亡の機に直面した…」としました。

 ですが、その担当者は「過去の記事に『存亡の危機』と出ているものが何本もある」とあまり納得がいかないようでした。

 なぜ、「存亡の危機」ではいけないのでしょうか?

 まず、「存亡」を『広辞苑』(第7版)でひくと、「存在することと滅亡すること。のこるかほろびるか」とあり、つぎに「存亡の機=存在するか滅亡するかの大切な場合。『存亡の秋(とき)』とも」と出ています。

 『大辞林』(第3版)や『日本国語大辞典』(第2版)といった辞書にも、同様な「存亡の機」の説明が載っていました。

 「存亡」とは、残るか滅びるかということ。一方、「危機」は「絶滅の危機」などのように、あるものが「大変危険な時期、きわめてあぶない状態」(『大辞林』)を言います。「亡」は滅びてしまうかもしれないので、「危機」を使ってもいいけれど、「存」ならば残るので、それは「危機」にはあたらない、ということになります。

 残るか滅びるかが問われる場面を言うなら、中立的な意味合いの「機」を使い「存亡の機」といったほうがふさわしいのではないか、ということが辞書から読み取れます。

 弊社の記事データベースでおよそ1年分、過去の記事を検索してみました。

 「存亡の危機」が13件、「存亡の機」が4件、「存亡の秋」が1件(ただし、これは「存亡の危機」「存亡の機」と同じ1本の記事の中に出ている)、「存続の危機」が22件見つかりました。思いのほか「存亡の危機」がたくさん使われているのだな、という印象です。 

 文化庁が発表した平成28年度の「国語に関する世論調査」(29年2~3月、16歳以上の男女3566人に個別面接で行い、有効回収率は56.5%)で、「どちらの言い方を使うか」という設問があり、その中で「存亡の機」が取り上げられていました。

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