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【正論2月号】朝鮮半島危機と関係していた!ロシアがこの隙に北方領土を軍事強化 小泉悠

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【正論2月号】
朝鮮半島危機と関係していた!ロシアがこの隙に北方領土を軍事強化 小泉悠

大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」型の第2回試射=2017年7月(朝鮮中央通信=朝鮮通信) 大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」型の第2回試射=2017年7月(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

 2010年代後半に入ると、北朝鮮を巡る関係性には再び大きな動きが見られるようになった。ことに2014年のウクライナ危機後にはこれが顕著となり、金永南最高人民会議常任委員会委員長、崔竜海党中央委員会政治局常務委員といった大物政治家が続々とロシアを訪問し、前述した債務の9割帳消し実施にまでこぎつけた。 

 さらには参謀本部間の交流などによる軍事的危機回避協定、ロシアに逃れた脱北者の送還協定、両国間の取引をルーブル決済で行う協定などが次々と結ばれていった。ことに脱北者の送還協定はそれ自体が政治的に機微なものである上、調印のタイミングも2016年に北朝鮮が行った弾道ミサイル発射と核実験の合間という微妙なものであった。仮に10年前のロシアであれば、このようなタイミングでは北朝鮮との機微な合意は手控えたであろうことを考えると、ロシアの北朝鮮傾斜は随分と強まってきたと言える。 

 さらに2017年に北朝鮮の核・ミサイル開発を巡って米朝間の軍事的緊張が高まると、ロシアは矢継ぎ早に行動を起こし始めた。たとえば2月に金正日前総書記の長男であった金正男氏が殺害された際、ロシアはウラジオストク経由で北朝鮮に逃亡した犯行グループの身柄を拘束するよう求めた韓国の要求を拒絶した。さらに4月には、民間企業が北朝鮮の貨客船「万景峰」号をウラジオストク航路に就航させることを認めたほか、北朝鮮に対するエネルギー供給も倍増させるようになった。また、北朝鮮は中国経由の光ファイバー回線でしかグローバル・インターネットに接続できていなかったが、2017年にはロシア国鉄系の通信会社が新たな回線を提供することとなり、中国にネット回線を遮断されても通信を維持できるようになった。 

 もちろん、ロシアとしても北朝鮮の核・ミサイル開発を認めているわけではなく、プーチン大統領やロシア外務省などもこれを非難する声明を度々出している。

 だが、実際に北朝鮮の核・ミサイル開発にどう対処すべきかという話になると、ロシアの態度は日米韓と大きく隔たっている。米国とその同盟国が北朝鮮に対する経済制裁や軍事的圧力を核・ミサイル放棄の手段として押し出しているのに対し、ロシア側は「北朝鮮は草を食べてでも核開発を続けるだろう」というプーチン大統領の発言(9月5日)に代表されるとおり、制裁の効果には否定的だ。それどころかプーチン大統領は朝鮮半島が「大規模な衝突」の瀬戸際にあると述べ、軍事的圧力も手控えるよう警告している。 

 ロシアの行動はこれに止まらない。7月に北朝鮮が初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)である火星14号を発射した際には、ロシア外務省は奇妙な行動に出た。この際の火星14号の到達高度は2800km超であり、通常軌道で発射した場合の射程は6700~8000km程度になるというのが周辺諸国の見立てであったが、ロシア軍の観測では到達高度は535kmに過ぎなかったと主張したのである。それが本当であれば、とてもICBMとは呼べない。火星14号は射程5500km以下の中距離弾道ミサイル(IRBM)だというのがロシア側の主張であり、これに基づいてロシア外務省は北朝鮮のミサイル発射を非難する国連安保理のプレス向け声明案を廃案にしてしまった。

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