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【正論2月号】朝鮮半島危機と関係していた!ロシアがこの隙に北方領土を軍事強化 小泉悠

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【正論2月号】
朝鮮半島危機と関係していた!ロシアがこの隙に北方領土を軍事強化 小泉悠

大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」型の第2回試射=2017年7月(朝鮮中央通信=朝鮮通信) 大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」型の第2回試射=2017年7月(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

※この記事は、月刊「正論2月号」から転載しました。ご購入はこちらへ。

■〈新春特集・ワシントンを火の海にする狂気〉 ロシアの沈黙 この隙に北方領土を軍事強化する ■ 未来工学研究所特別研究員 小泉悠

 かつて、ロシアは朝鮮半島問題における「忘れられたプレイヤー」と呼ばれた。そもそも北朝鮮という国家自体がソ連によって建国され、ソ連崩壊後もロシアは北朝鮮の隣国にして友好国であり、あるいは北朝鮮の核開発問題について協議する六者協議の正式メンバー国であったにもかかわらず、ロシアの存在感はあまりにも薄かったのである。これには幾つかの要因が考えられよう。  

 まず、北朝鮮の核開発問題が持ち上がった1990年代半ばの時点で、ロシアはソ連崩壊後の経済混乱の只中にあり、積極的な対外政策を取れる状況ではなかった。むしろ、極東への投資に期待を懸けて、韓国との関係強化に注力していたのである。  

 ロシアにとって北朝鮮は「勢力圏」ではなかったという事情もある。この場合の勢力圏というのはロシアが何でも差配できるような支配=従属関係のことではなく、ロシアの国境線外にありながら、一定の影響力を持つべきであるとロシアが考えているエリアのことだ。わかりやすい例はベラルーシやカザフスタンなど、ロシアと同盟関係にある国々だが、同盟には至らずとも一定の協力関係を築いていたり、積極的に他の大国の勢力圏に入らずにいるという消極的な形態の勢力圏も存在する。ロシアとは同盟しないが、ロシアが嫌がるNATO加盟にも踏み出さない、という国々(たとえばアゼルバイジャンやフィンランド、セルビアなど)がこれに当たる。 

 このような勢力圏の内部であれば、ロシアはソ連崩壊後の最も苦しい時期であっても積極的な介入を行ってきた。旧ソ連で発生した一連の武力紛争(モルドヴァでの沿ドニエストル紛争、グルジアの南オセチア紛争、タジキスタン内戦等)はもちろん、旧ユーゴスラヴィアでの紛争においてもロシアは硬軟の影響力を発揮してきた。  

 これに比べれば、1990年代から2000年代にかけてロシアが見せた北朝鮮への態度は如何にも低調であったと言える。冷戦期以来、北朝鮮は中ソいずれかの勢力圏に完全に入ることなく、両者の間でコウモリ外交を繰り広げてきた。そして、ソ連(ロシア)もまた、北朝鮮を積極的に自国の勢力圏内に取り込もうとはせずに現在に至っている。これはとどのつまり、ロシアにとっての北朝鮮の戦略的重要性がさほど高いものではなかったということであり、この点が中露の対北朝鮮関与における最大の相違であろう。  

 朝鮮戦争以来、北朝鮮と深い政治・経済的関係を持ち、1400km近い国境を接する中国にとって、北朝鮮の存在は文字通りの緩衝地帯として欠かせない存在である。これに対してロシアは北朝鮮に大きな経済的利権を有するわけではなく、金正恩指導部との太いパイプがあるわけでもない。国境に至ってはおよそ20kmを共有しているだけであり、政治・経済中心であるモスクワから6000km彼方にある。北京から北朝鮮国境までわずか650kmの中国とは、切迫度が全く異なる。

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