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【憲法76条の壁・軍法会議なき自衛隊(中)】守れぬ規律と情報 有事の敵前逃亡「懲役7年」の実力組織

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【憲法76条の壁・軍法会議なき自衛隊(中)】
守れぬ規律と情報 有事の敵前逃亡「懲役7年」の実力組織

 19年春ごろ、日米関係筋が在日米大使館を訪れると、米側担当者からこう告げられたという。

 同年1月、海上自衛隊第1護衛隊群所属の男性2等海曹(当時)が、自宅に持ち出した記録の中にイージス艦に関する情報が含まれていたことが、神奈川県警の調べで発覚していた。イージスシステムは米軍が開発し、日本に技術協力した最新鋭システムだ。

 米側担当者が「困る」と伝えたのは、これが事件化することで情報が表に出ることだった。日本は憲法76条2項で特別裁判所の設置が禁じられており、米軍のように機密管理が徹底した軍法会議が設置されていない。

 公開が義務付けられている一般裁判所で審理が進めば、機密中の機密であるイージスシステムの情報が公開されるかもしれない。これが米側担当者の懸念だった。

 しかし、この事件は19年12月、特別防衛秘密であるイージス艦情報を権限がない隊員に漏らしたとして、神奈川県警が海自横須賀基地業務隊の3等海佐(当時)を逮捕した。起訴後に最高裁まで持ち込まれ、懲役2年6月、執行猶予4年とした1、2審判決が確定した。

 実は、一般裁判所であっても機密を守る仕組みは整備されている。政府が特別防衛秘密などに指定した事実をもって「外形立証」が成立し、機密の内容は公開しなくてもいいとの判例が昭和44年3月の東京高裁判決で確立している。

 とはいえ、制度が整っていることと、現場での実態は異なる。

 政府資料によると、平成12年からの10年間で自衛官ら公務員による主な情報漏洩事件7件のうち逮捕された容疑者が起訴されたのはイージス艦機密漏洩事件を含む2件だった。残りは起訴猶予や不起訴となっている。捜査関係者は「有罪を勝ち取ろうとすると、いろいろ細かい情報を法廷に開示しなくてはならない。機密漏洩事件が起訴しにくいのは、それへの配慮もある」と語る。(敬称略)

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