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【WEB版 島を歩く 酒を造る】
(1)まるで儀式のような麹づくり 杜氏と蔵人の信頼関係に感心
産経新聞社は新潟県佐渡島の地域振興を支援する目的で、今年もオリジナル酒「辛口産経」を製造している。8月1日から7日間、新潟支局の松崎翼記者(24)が佐渡島に渡り、地酒「真野鶴」の蔵元である尾畑酒造の協力を得て、廃校となった木造校舎を酒蔵に改装した「学校蔵」で仕込み作業を体験した。
■初登校に胸が高鳴る
8月1日午前7時すぎ、今にも雨が降り出しそうな曇天の下、前夜の宿泊先である両津港近くの老舗旅館「吉田家」を出て、車で約40分かけて学校蔵に向かう。
アジサイとヒマワリの花の色鮮やかな組み合わせを横目に、起伏の激しい山道を進んでいると、視界が開けた。急な坂を登り、学校蔵に到着した。大学以来の久々の“登校”に胸が高鳴る。
午前9時、不織布でできた上着とキャップを装着する。まるで小学校の頃の給食当番のようだ。その格好で理科室を改造した仕込み室に入る。10メートル四方ほどの部屋で、仕込み用のタンクなどが置かれており、天井が高い。ここで酒が発酵・熟成されていくため、室温は16度ほどに設定されており寒いくらいだ。
入念に手をアルコール消毒する。先ほどの不織布の上着もそうだが、酒の味を守るため、麹から雑菌をシャットアウトする必要があるのだ。
まず、「甑(こしき)」とよばれる酒米を蒸す直径、高さとも1.5メートルほどの円筒形の大きな釜の前に案内された。「これが甑かあ」。高校時代、日本史の教師に「『コシキはムシキ』と覚えろ」と教えられたことを思い出した。大学受験の問題には出なかったが、こんな所で役立つなんて…。米を蒸すことでデンプン組織が破壊され(糖に分解されるため)、麹菌などが繁殖しやすくなるのだという。
辛口産経に使用するのは新潟独自のブランド酒米「越端麗(こしたんれい)」。21年目の蔵人、近藤崇さん(43)が蒸し上がった越端麗をスコップで甑から取り出し、布の上に広げる。