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【正論9月号】自民党政権のある防衛相のとき尖閣上空視察中止のナゾ「中国を刺激しない」では尖閣失う

 尖閣諸島をめぐる諸問題の本質は、無論中国の無責任な膨張主義にある。ただそれを許し、宥和的な姿勢を取っている日本の歴代政権の姿勢もまた大きな原因になっていると私は言いたい。断言してもいいが、日本が尖閣諸島での海保、自衛隊による対応を限定的なものにとどめ、実効支配を示す国家公務員の常駐も実施せず、国際的な公共財になり得る灯台、気象台、ヘリポート、避難港など施設の建設もしないという戦略を取り続けるならば、早晩中国は南シナ海と同じように振る舞うようになるだろう。

抑止力のためにできること

 昨今の政権が、特に南西諸島方面の防衛力を強化していることには私も一定の評価をしているのだが、実は中身が足りず、発想が弱いと考えている。  

 まず現場の疲労の問題を解決しなければならない。中国による絶え間ない領海、領空への侵入、通過は現場に重い負担を強いている。例えば鹿児島県の鹿屋基地で、対潜哨戒機P-3Cの搭乗員が待機、尖閣海域へ進出、作戦行動の上、帰投すると、場合によっては十時間を超える任務になることもあるそうだ。搭乗員の心身への負担は推して知るべしだが、一体どれだけの国民がこのことを知っているだろう。元海兵隊の関係者としては、「先の大戦で、ラバウルからガダルカナル上空まで、はるばる戦闘機を進出させた上で空中戦をやらせ、多くの優秀な搭乗員を失った史実を日本はもう忘れたのですか?」と聞きたいところだ。

 また最近のこの方面への中国軍機の侵入は宮古海峡に集中しているが、宮古島の隣にあり、現在は使用されていない3000m級の滑走路がある下地島の空港を、空自・海自の航空部隊が展開できる前線航空基地として一刻も早く活用すべきだ。作戦空域への到達時間が短縮できるだけでも大きなメリットになる。50年前から誘致してきた地元の方も歓迎するだろう。 

 そして既に年間千回を超えるといわれるスクランブル(緊急発進)に、米軍の戦闘機を加えるべきだ。これは尖閣諸島が安保第5条で防衛義務のある、「施政権下の」領土であるからだ。「訓練」という建前上の表現でもいいので日米が共に要撃任務に就けば、日米両部隊の相互運用能力の向上につながるだけでなく、中国など東アジア全域に対して、強い戦略的なメッセージの発信となる。また筆者は自衛隊幹部に2010年秋頃の日米幕僚会議ですでに提案しているのだが、日本政府は、米軍が日中平和条約締結の1978年以来使用していない射撃訓練場(久場島と大正島)の共同使用を要請すべきである。実は先述の「50の質問」でその意思があるかどうか、私は政府に尋ねている。政府がこの質問に回答できなかったのは「中国を刺激したくない」という、この45年間の日本政府の姿勢が変化していないあらわれであろう。 

 いずれにしても現場に負担を強いた上で対応を任せるのではなく、早急に国としての政策を作るべきである。自衛隊は、尖閣が奪われてから奪還する軍事的なオプションも念頭に置いており、時々それを自慢する人もいるが、それは「後の先」の策である。そもそも尖閣諸島という前線を獲られないように、政治・外交・行政が一体となった総合的な戦略を持つべきなのだ。

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