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【にっぽん再構築・インフラが危ない(4・完)】
韓国・釜山港に水を大きくあけられ…進む船舶大型化、接岸できない輸出基地
世界最大の自動車メーカーとなったトヨタ自動車のおひざ元・名古屋港。
自動車の輸出基地として活況を呈する金城ふ頭では8月末、運搬船が接岸し、作業員の合図とともに岸壁に並んだ車がハッチへ吸い込まれていった。
同港の自動車輸出は、国内の港湾全体の約4割を占め、自動車部品や産業機械も含めた総取扱貨物量(平成27年)は日本の港湾でダントツの約2億トンを誇る。
だが、日本の基幹産業を支える物流拠点の“水面下”では静かに危機が進行していた。「仲間たちと『これで大丈夫かね』『“三流港”になっちゃうよ』って話している」。荷役作業の管理を行う会社の現場責任者は肩をすくめる。
整備から40年以上の金城ふ頭は桟橋の支柱がところどころでひび割れ、岸壁も潮が引けば腐食した鉄筋がむき出しだ。耐震強化が施された岸壁も少ない。「いつ使えなくなってもおかしくない」と国土交通省の職員も危惧した。
世界の潮流からも取り残されつつある。自動車部品などを運搬するコンテナ船は世界的に大型化が進み、欧米に向かう基幹航路では水深16メートルを必要とする大型コンテナ船が主流になってきているからだ。
だが名古屋港で、16メートル以上の水深を備えた岸壁は2隻分足らず。21隻分を確保する韓国・釜山港に水を大きくあけられている。自動車積み替えに不可欠な保管スペースも限られている。
伊勢湾に寄港する基幹航路便数は過去17年間で23便から11便に半減した。
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「船舶の大型化に対応できなければ日本経済を牽引(けんいん)する自動車産業の足まで引っ張りかねない」。国交省名古屋港湾事務所の三崎隆央・企画調整課長は話す。しかし、財政再建を目指す政府からの財源確保は一筋縄ではいかなかった。