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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】独立不羈の男・河合栄治郎(60)その生涯編 戦火拡大

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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】
独立不羈の男・河合栄治郎(60)その生涯編 戦火拡大

支那事変(日中戦争)の戦費調達のため国債が売り出され、バスを利用した巡回売り場で買い求める人々 支那事変(日中戦争)の戦費調達のため国債が売り出され、バスを利用した巡回売り場で買い求める人々

測りがたき謎の国

 「日支問題論」の主題は、彼自身が述べているように、事変が極東の大戦を引き起こすことを阻止しながら、「此の事変に一つの道徳的意義を見出そうとする」ことにあった。

 栄治郎が論文で特に注意を喚起したのは、日本の自由独立と国家としての品位の尊重である。満州にある特殊権益を前提に、「日本は支那よりして自由と独立を尊重さるべき権利があり、更に国家の品位を尊敬され列国と平等に待遇さるべき権利がある」と主張する。

 さらに、西安事件以降の大陸でも、「支那赤化」の脅威があることに着目した。大陸が赤化されれば、「コミンテルン幹部の指令によって動く傀儡となる」ことを警戒したのだ。

 彼らは朝鮮、台湾、そして日本にも入り込む懸念があり、栄治郎はそこにも支那事変を遂行する根拠を見いだした。中国の抗日政策や赤化を根絶し、「早い時期に戦局を収めることが有利なことは云うまでもない」と早期解決論をとった。

 栄治郎の対外リアリズムは、「測り難き謎の国支那を近接国に持つことは、いかに日本は呪われた運命にあろう」と日中の地政学にまで及んでいる。まるで、現在の日中関係を見通すような視点である。

 彼は祖国愛に満ちた自由主義者であった。近衛首相に「すみやかな終結」を提起したものの、対中戦争を選択してしまった以上、堂々と戦うべきであり、その結果に対しては国民すべてに共同責任があると喝破した。=敬称略(特別記者 湯浅博)

                   

■独立不羈(どくりつふき) 束縛や制約を受けずに自分の意思に従って自由に行動する。「羈」は馬のたづなの意味。

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