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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】独立不羈の男・河合栄治郎(60)その生涯編 戦火拡大

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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】
独立不羈の男・河合栄治郎(60)その生涯編 戦火拡大

支那事変(日中戦争)の戦費調達のため国債が売り出され、バスを利用した巡回売り場で買い求める人々 支那事変(日中戦争)の戦費調達のため国債が売り出され、バスを利用した巡回売り場で買い求める人々

 経済界にとって満州は、多くの日本人が経済活動を営む特殊権益の地であり、日露戦争の犠牲を払って獲得した大地であるのは自明であった。栄治郎の「日支問題論」の指摘もまた、「支那は自国を防衛する能力なく、空しく露西亜の蹂躙(じゅうりん)に任せた」のであり、「日本は自己の自由独立を防衛する立場から、露西亜と戦い之を満州南部から駆逐すると共に、露西亜の所有する権利を譲渡された」と位置づけていた(「日支問題論」『全集第十九巻』)。

 満州における日本の権益は、英仏のように中国から直接奪取したのではなく、日露戦争の勝利による権利の譲渡であり、その特殊性を繰り返し述べている。満州に権益をもつと「防御は攻撃的防御に変形」し、日本の発展と膨張とが、「次の国是として浮かんできた」のである(「第一学生生活」『全集第十七巻』)。

 近代史研究者の中には、河合栄治郎が日本の対外進出を批判していないことをもって、自由主義思想の限界を問う議論がある。これに対し、栄治郎の擁護者は、国民によって選ばれた衆議院で議決された場合には、たとえ思想信条が違っても、容認せざるをえないとの考え方をとっていたと反論する。

 確かに栄治郎は、『日本評論』昭和12年7月号の「時局・大学・教授」で、「戦時予算の協賛に際しては吾々国民の選挙したる代議士が満場一致を以て政府を支持した」と述べる。その上で、異論があろうとも「時局に対して熱情を以て終始することは、立憲国民の義務でなければならない」と明快であった(『全集第十九巻』)。

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