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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】独立不羈の男・河合栄治郎(58)その生涯編・人民戦線事件

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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】
独立不羈の男・河合栄治郎(58)その生涯編・人民戦線事件

昭和12年ごろの新法文経済学部教室・研究室 (「東京大学の百年 1877~1977」から) 昭和12年ごろの新法文経済学部教室・研究室 (「東京大学の百年 1877~1977」から)

 翌年2月1日に大内、有沢、脇村義太郎、美濃部亮吉らが逮捕され、コミンテルンに無関係の左派にまで司直の手が伸びた。九大の高橋正雄は欧州留学から帰国した横浜で逮捕されている(第二次人民戦線事件)。

 東京帝大では土方ら革新派がこの機会を逃さず、起訴前の即時処分を主張した。特に栄治郎ら「純理派」の動向が鍵を握る。大内、矢内原を失った左派には、上野道輔、舞出の2人しかいない。栄治郎は反マルクス主義の闘将であり、大内とは思想対立があるうえ人間的にも肌が合わない。土方は今度こそ純理派が同調することを確信していた。

 しかし、栄治郎は5時間におよぶ会議で、上野らとともに反対に回った。高等官である大学教授の休職処分は、文官分限令により「起訴セラレタルトキ」に限られているのに、検挙されただけの即時処分は不当というものだった。

 ここに栄治郎の知識人としての本領があった。栄治郎は自己の知的確信に忠実であり、言論の自由という価値が命を懸けるに値するものと考える(渡部昇一「河合栄治郎の意味」文化会議第127号)。

 土方は形勢不利とみて決定を次回に先送りするよう提案した。だが、栄治郎らは即時採決を求め、休職賛成5、反対6の僅差で否決された。土方は面目を失って学部長を辞任し、「起訴前処分」は消えた。

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