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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】独立不羈の男・河合栄治郎(50)その生涯編・五・一五事件

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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】
独立不羈の男・河合栄治郎(50)その生涯編・五・一五事件

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(毎週土曜日に掲載します)

軍部批判の前線に立つ

 その夜、河合栄治郎は雑誌『文芸春秋』に掲載する論文「五・一五事件の批判」をようやく書き上げた。70枚の大作である。意を決して軍部批判を書いた、との高揚感があった。

 だが、栄治郎は翌日の昭和8年10月3日、「少し筆が乾いていて不満だ。それと何かつまらぬ問題を起こしやしないかと思って少し神経質になっていた」と日記に書き、時代の風を気にかけていた。

 実際に五・一五事件が起きたのは、前年の5月で、栄治郎が2度目の欧州留学でドイツに滞在していたときだった。祖国の衝撃的な事件ではあったが、遠く離れた欧州の一角にあってはまだ、どうとらえるべきかの考えがまとまっていなかった。

 あれから半年以上を経て公判が開かれ、被告人陳述が世の関心を集めていた。栄治郎が「問題を起こしやしないか」と神経質になっていたのは、被告人に対する世間の同情が広がり始めていたからである。しかも、世上にはテロによる国家改造を目指す政治結社が跋扈(ばっこ)していた。

 井上日召の血盟団は「一人一殺」主義をとり、昭和7年の2月に井上準之助前蔵相を暗殺し、3月には三井財閥トップの団琢磨を射殺した。そして「五・一五事件」が起きた。海軍の青年将校らが陸軍士官学校生を巻き込み、犬養毅首相の首相官邸をはじめ、内大臣官邸、日本銀行、警視庁を襲撃したクーデターである。

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