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【谷川俊太郎に聞く】「意識して書くと詩は面白くない」「言葉になっていない混沌が ぽこっと出てくるのを待ちます」

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【谷川俊太郎に聞く】
「意識して書くと詩は面白くない」「言葉になっていない混沌が ぽこっと出てくるのを待ちます」

「最近は注文よりも自発的に書く詩が増えています。毎日パソコンを開けては推敲しています」と語る谷川俊太郎さん =東京都杉並区の自宅 「最近は注文よりも自発的に書く詩が増えています。毎日パソコンを開けては推敲しています」と語る谷川俊太郎さん =東京都杉並区の自宅

 熊本の大震災-。制御不能な自然の暴力を見せつけられ、言葉を失っていた。正直に言えば自閉していた。新聞やテレビの言葉はまったく心に届かない。初老の男にできたのはささやかな募金をすることぐらい…。そんなおり、銀の鈴社という出版社から1冊の詩集が送られてきた。谷川俊太郎さん(84)の自選詩集『そして』である。収められた詩を読みながらカチカチになっていた心がゆっくりとほぐれてゆく感触を確かに味わった。そして、谷川さんに会って話がしたいと痛切に思った。(桑原聡)

 『そして』は、下田昌克さんの鉛筆画が29篇(へん)の詩をつなぎ、大きさも形も色も異なる宝石を連ねたネックレスのような詩集だ。心がほぐれるきっかけは「なつのゆきだるま」だった。水平線に浮かぶ入道雲をお父さんと思い込んだ雪だるまが犬かきで沖に向かって泳いでゆく。詩はこう閉じられる。《プランクトンの むれに まじって/うみのそこに しずむ ゆきの ひとひら》。目が潤んだ。タイトルになった「そして」の《なんという恩寵(おんちょう)/人は/死ねる//そしてという/接続詞だけを/残して》には心が震え、最後に置かれた「いまここにいないあなたへ」の《あなたとことばで であいたいから/わたしはかたる かたりきれないかなしみを/わたしはかく ことばをこえるよろこびを》からは自閉した穴から出る勇気を与えられた。だからいま、私はこの原稿を書いている。

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