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【伝える ある震災遺族の5年(2)】息子が誇りにしていた東北有数の大企業を相手に訴訟…それは断腸の思いだった

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【伝える ある震災遺族の5年(2)】
息子が誇りにしていた東北有数の大企業を相手に訴訟…それは断腸の思いだった

仙台高裁が控訴審判決を言い渡すのを前に、原告遺族らと裁判所に入る田村健太さんの母、弘美さん(右)=平成27年4月22日、仙台市青葉区(岡田美月撮影) 仙台高裁が控訴審判決を言い渡すのを前に、原告遺族らと裁判所に入る田村健太さんの母、弘美さん(右)=平成27年4月22日、仙台市青葉区(岡田美月撮影)

 「同じこと繰り返さない会社に」

 「最高裁から連絡があり、上告は棄却されました」

 震災5年の節目まで1カ月を切った先月18日の夜。勤務先から帰宅中だった田村孝行さん(55)の携帯電話に、代理人弁護士から連絡が入った。原因究明を望んで銀行を相手取って損害賠償を求めた訴訟はこの日、遺族側の敗訴が確定した。

 「審理してほしかった。これが司法の限界か…」

                   

 「支店から走って1分しか離れていない高台があるにもかかわらず、なぜ高台に逃げずに支店屋上にとどまったのか」

 平成23年12月、田村さん夫妻を含め9遺族で被災者家族会をたち上げ、銀行に原因究明や謝罪、支店解体の取りやめなどを求め続けた。銀行からは、調停や裁判外紛争解決手続き(ADR)などの提案を受けたものの、家族会の要望に対する十分な回答は得られなかった。

 それから半年後、夫妻が見つめる中、支店の解体工事は始まった。「このままでは、健太の死が何もなかったことにされてしまう」。こうして夫妻は他の2遺族とともに、震災から1年半後の24年9月11日、提訴に踏み切る。銀行を相手取って原因究明と約2億3500万円の損害賠償を求めたものだった。

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