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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】独立不羈の男・河合栄治郎(27)その生涯編・浪人生活

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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】
独立不羈の男・河合栄治郎(27)その生涯編・浪人生活

明治期の文部省(国立国会図書館蔵) 明治期の文部省(国立国会図書館蔵)

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(毎週土日に掲載します)

森戸事件とその余波

 時代は大正デモクラシーのまっただ中にあった。大正8(1919)年4月に、東京帝大法科大学経済学科が分離独立して経済学部になる前から、若手研究者の間で「大学若返り論」が盛んに語られていた。教授団の中で、中心的な役割を果たしたのが高野岩三郎であり、その右腕が森戸辰男であった。

 特に、森戸ら若手助教授は、独立を果たした経済学部のあり方について、「守旧の府にしてはならない」と考え、伝統をあえて破る方向へ導いた。彼らは「同人会」というグループをつくり、大蔵省にいた大内兵衛や農商務省の河合栄治郎を招こうと運動してきた経緯がある。新学部の機関誌『経済学研究』の創刊も、その改革の一環であった(森戸『遍歴八十年』)。

 大蔵省からいち早く転進した大内兵衛は、助教授に就任すると新しい機関誌の編集者になった。森戸が創刊号に書いた論文「クロポトキンの社会思想の研究」は、まさに新風を吹き込む意欲的な論文であった。

 森戸はクロポトキンを紹介するにあたって、「理念としての無政府主義」と、「実行方針としての無政府主義」を峻別し、実行方針としてのそれを「自由なる人格」を究極の目的とする立場から明確に否定した。従って森戸自身は、論文が検察や文部当局に問題視されるとは考えもしなかった。

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