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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】独立不羈の男・河合栄治郎(14)その生涯編・弁論部記念講演

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【湯浅博 全体主義と闘った思想家】
独立不羈の男・河合栄治郎(14)その生涯編・弁論部記念講演

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(毎週土日に掲載します)

 蘆花の「謀反論」とは何か

 大逆事件の幸徳秋水らが、東京・市谷の東京監獄で処刑されて1週間後の明治44(1911)年2月1日。作家の徳富蘆花は、武蔵野の寓居から人力車で甲州街道を東に向かっていた。行く先は、本郷区向ケ丘にある第一高等学校である。

 一高内の第一大教場は数百人の聴衆であふれかえっていた。紋付き、羽織姿の蘆花が登場すると、「演題は未定」であるのに場内は不思議な空気に包まれていた。『不如帰』で知られる気鋭の作家は果たして大逆事件を語るのか。入場できない人々は窓から場内をのぞき見た。

 主催者の河合栄治郎、河上丈太郎(戦後の社会党委員長)、鈴木憲三(のち弁護士)ら一高弁論部の3年生委員は、この記念講演をもって2年生の新委員と交代することになっていた。引き継ぎにあたっては各界の著名人を担ぎ出すことを習いとした。彼らが真っ先に考えたのが徳富蘆花である。

 栄治郎らは蘆花が数年前に、勝者の胸に去来する悲哀を「勝の哀(かな)しみ」と題し、ここ一高で論じた講演にあやかりたいと考えた。このとき、講演を聞いた学生の中には、「人世の無常を感じて、行李(こうり)を纏(まと)めて故山に帰ったものさえあった」と伝えられている(「近頃の随想」『河合栄次郎全集第十七巻』)。

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