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【満州文化物語(12)】妊婦ら在留邦人270人はなぜ助かったのか? 「奇跡の脱出行」…関東軍部隊の決断と伝統

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【満州文化物語(12)】
妊婦ら在留邦人270人はなぜ助かったのか? 「奇跡の脱出行」…関東軍部隊の決断と伝統

第一大隊長の下道重幸大尉(「下道部隊戦友会誌」から) 第一大隊長の下道重幸大尉(「下道部隊戦友会誌」から)

 そして、最大の危機がやってくる。隊列は万里の長城を越し、清朝の歴代皇帝稜(東稜)近くに差し掛かっていた。ソ連軍追撃の危機からようやく逃れられた、という安心感から、2日間の休息をとっていた矢先の9月4日、八路軍の軍使がきて、部隊の武装解除を要求したのである。

 軍使は、武器を引き渡せば、北京までの安全は保証するという。だが、大隊長の下道は厳然と相手の要求を一蹴した。「武装解除はできない。どうしても通さないというのなら、一戦交えることも辞さない」

 大きな賭けだった。清田はいう。「下道大隊長は八路軍から何万元もの懸賞金を掛けられていたほどの人物。兵隊の数では劣っていても武器(火力)では負けない、という自信があったのでしょうね」

 凛(りん)とした下道の態度に八路軍の軍使はそのまま引き下がったが、一行が出発した直後に攻撃を仕掛けてくる。部隊の2人が銃撃を浴び、戦死を遂げるが、それ以上の追撃はなかった。

 9月9日、一行は川の対岸に北支軍が待つ三河へ到達する。そこで下道部隊と別行動となった居留民は12日、無事に北京の日本人女学校校舎へ入ることができた。10日あまりの「奇跡の脱出」行。犠牲者は最小限度にとどまった。

 下道の決断が居留民の運命を「天と地」ほど変えたと分かるのは後になってからである。次回、それを書きたい。敬称略、隔週掲載。

(文化部編集委員 喜多由浩)

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