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【満州文化物語(10)】娘の首に刀を…「ごめんね、母さんもすぐに逝くからね」 ソ連軍に蹂躙された「葛根廟事件」

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【満州文化物語(10)】
娘の首に刀を…「ごめんね、母さんもすぐに逝くからね」 ソ連軍に蹂躙された「葛根廟事件」

今夏、葛根廟事件の現場を再訪した大島満吉さん(田上龍一氏撮影) 今夏、葛根廟事件の現場を再訪した大島満吉さん(田上龍一氏撮影)

悲しき最後の晩さん

 終戦間際、満州では南方へ転身していた関東軍の兵力を穴埋めするために、一般の多くの成人男子が「根こそぎ動員」で軍隊に召集されていた。葛根廟事件に遭遇したのはほとんどが、女性や子供、お年寄りである。武器はわずかな成人男子が小銃などを持っていただけ。その“弱者集団”を戦車が虫ケラのように踏みつぶし、砲や自動小銃で撃ち殺したのだ。

 絶望した避難民は、青酸カリをあおったり、互いに短刀を胸に突き刺したり、わが子の首をヒモで絞めて自決する人たちが相次ぐ。壕の中には母親と満吉、6歳の弟と2歳の妹…。覚悟を決めた母親は妹の首にいきなり刀を突き立てた。「ごめんね、母さんもすぐに逝(い)くからね」。鮮血があふれ、妹は声も出さずに死んでいった。泣きながら小さな顔に頬ずりをして、手を合わせた母の姿が忘れられない。

 国民学校の校長先生の子供たちがいた。両親はすでに亡い。ひとつ年上の長女から声を掛けられた。

 「『最後の晩さん』をしましょう、って。荷物の中にあったそうめんや角砂糖を出してきて一緒に食べました。味なんかしなかった。ああこの世の別れなんだ。『死にたくない』って思いましたけれど…」

 満吉の前に十数人の列ができていた。日本刀を持った在郷軍人に刺し殺してもらうのを順番に待っているのだ。 

 そのとき、離ればなれになっていた父親とひとつ上の兄が突然、壕に姿を見せる。「お前たち、生きてたのか! 随分、探したんだぞ。さあ立て、こんなところで死ぬことはない」。父親の大声が響いた。

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