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【話の肖像画プレミアム】戸田奈津子(78)=映画字幕翻訳者=コッポラ監督が抜擢、“誤訳”の批判は「気にしない」

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【話の肖像画プレミアム】
戸田奈津子(78)=映画字幕翻訳者=コッポラ監督が抜擢、“誤訳”の批判は「気にしない」

(野村成次撮影)

 〈最近、日本語をめぐっていらだちを感じることが少なくない〉

 映画会社からは「字幕の漢字をひらがなにしろ」と言われるんですよ。例えば「拉致(らち)」。「ら致」じゃ重みがない。素晴らしい言葉は漢字だからこそ素晴らしいんです。「安堵(あんど)」が難しいから「安心」に変えてくれと言われたこともありました。でも2つは似て非なるもの。その違いが無視されたんです。「日本語が貧しくなっている」と痛感しましたね。

 乱暴な言い方をすれば、字幕で映画を見るのは日本だけです。お客さんが字幕を好んだのですね。理由はいろいろありますが、日本人は勤勉だから外国のことを正しく知ろうとする。本物を好むのです。日本人はトム・クルーズの肉声を聞きたいけど、海外の人はトムの声に興味はないから吹き替えの方を取る。

 何よりも日本は識字率が高かった。ここはあえて過去形で言いますね。それに日本語は字幕的な言語なんです。漢字は一字みれば意味をパッとつかめるでしょ。視覚的には漢字が文章を引き締め、ひらがなは柔らかい。あのバランスが大画面で見たときにとても美しい。残念ながらその素晴らしい文化が崩れつつあります。

 映画字幕の翻訳と通常の翻訳は別ものなんです。字幕が字数に縛られていることを知らない人から「誤訳」などと批判を受けることもありますが、気にしません。もちろん間違った訳や下手な意訳はいけない。理想的な字幕は、観客に字を読んだという意識が何も残らない字幕なんです。画面の人が日本語をしゃべっていたと錯覚を起こすくらい「透明な字幕」が一番いいんです。

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