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【安倍政権考】芥川龍之介「藪の中」を彷彿させる日朝交渉 「包括的調査」という曖昧合意で迷走は始まった…

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【安倍政権考】
芥川龍之介「藪の中」を彷彿させる日朝交渉 「包括的調査」という曖昧合意で迷走は始まった…

拉致被害者家族会メンバー(右側)に安倍晋三首相は「あらゆる手段を尽くす」と拉致問題解決の決意を伝えた=4月3日、首相官邸

 ある男の刺殺体をめぐり、盗人の多襄丸(たじょうまる)、男の妻、そして巫女(みこ)の口を借りて語る男の霊の3つの証言が完全に食い違う-。芥川龍之介の小説「藪の中」は複数の異なった視点から同一事象を描く。実は安倍晋三政権の最大の課題、拉致問題をめぐる日朝交渉の実態をほうふつさせる。

ボタンの掛け違いでスタート

 昨年5月、スウェーデンのストックホルムで開かれた日朝外務省局長級協議。その際、合意した文書には拉致問題について「再調査する」との明確な文言はなかった。

 代わりにあったのが「全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施する」。日本側はこれを「再調査」と受け止めた。一方で、北朝鮮は日本政府認定の未帰国拉致被害者12人について、かつての金正日総書記による「8人死亡・4人未入国」の判断を尊重したまま、日本人配偶者・遺骨問題の調査にすり替えることが可能となった。合意文書にはこのような曖昧な表現があるため、政府内では当初から再調査の実効性に疑問符を付ける高官もいたが、外務省が押し切った。

 杞憂(きゆう)で終わらなかった。「夏の終わりから秋の初め」とされていた初回の再調査報告はほごにされた。日朝交渉筋は「合意文書のボタンの掛け違いが、結果的に交渉を長期戦へと誘った」と振り返る。

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