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【話題の肝】出版不況の逆風でも「世界文学全集」40万部売り上げの驚異 「より深く考えるコンテンツを」編集と読者が一致、「全集」活況の興味深い背景

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【話題の肝】
出版不況の逆風でも「世界文学全集」40万部売り上げの驚異 「より深く考えるコンテンツを」編集と読者が一致、「全集」活況の興味深い背景

「最後まで読める全集を目指した」

 河出書房新社の日本文学全集は、作家の池澤夏樹さん(69)が「今何を読むべきか」という観点から個人編集した点が特徴だ。数人の編者が収録作品を選ぶ恒例の手法よりも、編集側のメッセージを強く打ち出すことができる。

 日本文学全集編集部の東條律子編集長(52)は「過去の文学全集は発行数が多い半面、実際に読むのは購入者の10%ほどとも言われる。今回、目指したのは最後まで読める全集。現在の読者には、誰かから『こういうのがいいよ』と勧めてもらいたいというニーズがある」と指摘する。

 読者に「深い読み」を提示する編集姿勢は個人全集にもみられる。中央公論新社の谷崎全集では、作品の背景など最新の研究成果を「解題」として、各巻1割ほどのページを充てる。瀧澤晶子全集編集室長(53)は「解題は一般読者に作品の背景をより深く理解してもらうためのツールにもなり得る」と説明する。

 谷崎は79歳で死去するまで旺盛に執筆を続けた作家。瀧澤室長は「『老人と性』をめぐる晩年の著作など、谷崎なら現代に通じるテーマを世に問うことができる」と強調した。

読者側も「偉大な仕事」とエール送る

 出版不況の中で、あえて大型全集の刊行に踏み切る出版社の姿勢も読者の共感を呼ぶ。晶文社は昨年3月から吉本全集の刊行を開始。膨大な著作群の刊行には大手出版社も二の足を踏んだ経緯がある。

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