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【「昭和」の青春】第13話 「ビートルズのどのアルバムが好きか」…その人の音楽的嗜好が分かる 

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【「昭和」の青春】
第13話 「ビートルズのどのアルバムが好きか」…その人の音楽的嗜好が分かる 

 フォーク酒場「昭和」の周辺。神田界隈は新橋と並ぶサラリーマンの聖地である

 午後6時の開店直後に店に入ると見慣れぬ先客がいた。40代半ばのカップル。中島みゆきの「夜会」を見るために宮城県からやってきた。前夜、赤坂ACTシアターでみゆきの舞台を堪能し、そのついでに立ち寄ったという。

 ステージが始まる7時には店はほぼ満席となっていた。2人は真っ先にステージにあがる。女性が「8時の新幹線で宮城に帰るため、1曲だけやって東京駅に向かいます。それでは研ナオコさんが歌った《かもめはかもめ》(78年、中島みゆき作詞作曲)を歌います」と言うと、男性がアルペジオで前奏を弾き始める。緊張していたのだろう、最初は声がうわずっていたが、サビの部分から持ち直し、この悲しい歌を見事に歌いきった。初めての客に対しては特に温かい拍手を送るのがこの店の流儀である。2人は大きな拍手に恥ずかしそうに頭を下げ、「それでは失礼します」と言って店を出ていった。

 その夜もいつものように、入店順に次々と演奏が繰り広げられていく。ブドウ色のセーターを着た男性が演奏を始めると、店の空気が少し変わった。書誌学者にしてエッセイストのリンボウ先生(林望)、もしくは上田正樹によく似た風貌の男性は、ステージアシスタントのタカにベースを弾かせ、自身はセンスのいい音をギターから引き出しながら《ティル・ゼア・ウァズ・ユー》を軽い調子で歌う。大人の音楽である。

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