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【島が危ない 北の海の火種(4)】
「北の国境」弱体化させる過疎…細る漁業・観光、打開策見出せぬ“無策”
「今年は毛ガニもなんぼかよかった。それだから、年も年だし、やめようと思って。いい案配に船も売れたし」
45年前から、ウニとコンブ、それに毛ガニ漁を続けてきた北海道利尻富士町鴛泊(おしどまり)の男性(73)は今年、15トンの漁船を売却し、漁師廃業を決めた。
「昨年、コンブは15キロで14万円だった。高いなんてもんじゃなかった。いまだかつてない」
ウニも今年は高く売れた。「普通は組合さ出す値段は1キロ8千円から9千円なのに、今年は1キロ1万4千円、1万5千円だもの。一番高いときで1キロ2万円という日が何日も続いた」
だが、そろそろ潮時だという。理由は、年齢と後継者がいないこと。それに燃油の高騰だ。
利尻島の漁業の水揚げ高を見ると、平成19年度は利尻富士町2282トン(約20億円)、利尻町1542トン(約18億円)だったのが、24年度は利尻富士町2112トン(約16億円)、利尻町1305トン(約16億円)と落ち込んでいる。
組合員の数も減った。利尻漁協の佐々木修さん(49)は「利尻島全体で700人を割った。35年前、私が漁師になったときは千人を超えていた。あと10年もすれば、さらに半減するだろう」と話す。