元なでしこの永里優季、男子リーグに移籍 前代未聞の挑戦「責任と覚悟を持って」 - 産経ニュース

元なでしこの永里優季、男子リーグに移籍 前代未聞の挑戦「責任と覚悟を持って」

 サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」の黄金期構築に貢献したFW永里優季(33)が、男子チームでプレーする異例の挑戦をスタートさせた。加入したのは神奈川県2部リーグの「はやぶさイレブン」で、10日の入団会見で「男子リーグでプレーすることを目標にやってきた。責任と覚悟を持ってチャレンジする」と決意表明。女子の中では際立ったフィジカルの強さを誇る元なでしこが未踏の地を歩み始めた。
 決断の背景には新型コロナウイルスの感染拡大があった。所属する米女子プロリーグ(NWSL)のレッドスターズも活動を制限され、「思い切ってプレーする環境がなく、思いついたのがはやぶさイレブンでプレーすることだった」。生まれ育った神奈川県厚木市を拠点とする地元クラブに話を持ち掛けて入団が実現。はやぶさイレブンの宇野陽代表は「彼女のチャレンジをサポートしたい」と述べた。期限付き移籍で、NWSLの次期シーズンにはレッドスターズへ復帰する。
 日本サッカー界が生んだ稀有な女子選手であることは間違いない。身長168センチ、体重60キロ前後とサイズがあるわけではないものの、力感があって海外の大型選手に当たり負けしないフィジカルの強さがある。なでしこの主力時代、ストライカーとしての決定力もさることながら、最前線から中盤に降りてきてこなすポストプレーの安定感も抜群だった。
 実績はすさまじい。なでしこで2011年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会優勝のほか、12年ロンドン五輪と15年W杯カナダ大会の準優勝に貢献。国際Aマッチ出場132試合は歴代4位で、58得点は澤穂希の83得点に次いで歴代2位となっている。国内随一の名門・日テレで才能を開花させ、ドイツやイングランド、米国といった本場のクラブを渡り歩いてきた。
 しかし、男子相手のプレーは次元が異なる。J1から7カテゴリー下のリーグであっても永里のサイズは明らかに小柄で、スピードやパワーも見劣りする。女子の中ではパンチ力のあるシュートを放つといっても、男子とは比較にならない。接触プレーの激しさには別競技といっていいほどの差があって故障の恐れも付きまとい、対戦相手が困惑するのは想像に難くない。
 永里もハードルの高さを認識しつつ、「ポジショニングや駆け引きで激しいコンタクトを避けてプレーしたい」と青写真を描く。練習で男子大学生らを相手にプレーした経験はあり、「男子チームに入ってプレーするのは状況が違うが、男子大学生を相手にプレーしていて、まったくやれないという感覚はなかった」と自信ものぞかせた。
 入団会見を見守ったチームメートとなる兄でJリーグでも長くプレーしたFW永里源気(34)は「技術は通じる。フィジカルは問題になるが、永里優季ならできるんじゃないか。試合に出るために、まずは監督やチームメートに認められるしかない」とコメント。妹でカナダW杯日本代表の永里亜紗乃さんは「姉は子供のころ、進路希望に『Jリーガー』と書いていた。通用する、しないということではなく、ようやく踏み出せてよかった」と喜んだ。
 はやぶさイレブンは将来的なJリーグ入りを目指し、源気のほかJ1浦和での活躍が印象的な元日本代表FW永井雄一郎(41)も所属する。永井と同級生の中村俊輔がJ1横浜FCでプレーを続けるなどまだまだ働ける年齢であり、神奈川県2部リーグは永里にとって明らかに“格上”の舞台だ。
 永里は「自分が何をしたいのかに焦点を当てた」と考え抜いた末に決断し、クラブもオファーに魅力を感じたからこそ受け入れた。自身も賛否がある選択であることを認識しながら、「サッカーをしている女の子たちに1つの選択肢を作ってあげられるかな」と前を向く。話題作りだけで終わるつもりはない。
(運動部 奥山次郎)