【近ごろ都に流行るもの】「駐車場シェアリング」 免許返納…自宅のガレージ貸し出して - 産経ニュース

【近ごろ都に流行るもの】「駐車場シェアリング」 免許返納…自宅のガレージ貸し出して

免許返納後に空いた自宅駐車場をシェアリング登録している84歳の男性(akippa提供)
登録されている駐車場の地図とガレージの様子が画面に表示される「akippa」
目的地近くの登録駐車場をスマホで一覧覧比較できる。車種による対応、15分単位から1日の駐車料金がわかる「akippa」
貸し出し中の山下智義さん宅ガレージ=東京都文京区(akippa提供)
 よそのお宅の駐車場をインターネット予約・決済で誰でも借りられるサービス「akippa(あきっぱ)」が成長している。昨年中に運転免許を自主返納した人の数は60万人を突破し過去最多に。昨年4月に発生した池袋暴走事故が契機になったとみられ、空いたガレージを貸し出す高齢者が目立つという。昨秋には損害保険大手が出資。保険代理店のネットワークを強みに、登録駐車場の拡大に弾みをつける。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、電車やバスを避けてマイカー移動に切り替える人もおり、「平時」とは違う需要も生まれている。(重松明子)
 東京都文京区の山下智義さん(78)は、池袋暴走事故直後の昨年5月1日に77歳で免許を返納した。ガレージはしばらく空いたままだったが10月、akippaが損保ジャパンの関連会社になったことを新聞記事で知り、駐車場登録をした。「不特定多数の方にお貸しするのには不安もあったが、大手の出資でそれも払拭された」と話す。
 駐車料金の半額が貸し手に入る仕組み。「月に1万5000円~2万円ほどでも、孫のお小遣いくらいにはなります」。自宅は東京ドームまで徒歩圏内の好立地。コロナの影響で野球やコンサート需要はなくなったが、4月の緊急事態宣言を機に、マイカー通勤に切り替えた近隣の会社の予約が一気に入ったという。
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 akippaは、金谷元気社長(35)が平成26年に大阪市で始めた駐車場シェアリングの先駆けであり最大手だ。昨年10月に損保ジャパンが既存株主からの譲渡と出資で株式の約33・4%を取得し、関連会社化した。
 「大手IT企業も参入を試みて撤退した競争の厳しい業界。先に手をつけたakippaには圧倒的な強みがあった」。当時、損保ジャパンの特命課長として水面下で交渉を進め、現在はakippaの総代理店に出向している渡部達也マネージャー(38)は、関連会社化のねらいを語った。
 「利用者数に対して駐車場が足りていないのが課題だが、損保ジャパンの自動車保険契約は約1300万件ある。解約手続きで、免許返納などで自動車を手放した人が直ちにわかるため、駐車場貸し出し登録への移行をスムーズに提案できる」
 現在、会員(ドライバー)数180万人超に対し、登録駐車場数は首都圏と京阪神を中心に3万5000カ所。2年後には会員1000万人、駐車場20万カ所を目指している。
 駐車料金は相場より2割ほど安く設定している場合が多いが、狭かったり停めにくかったりと環境が悪ければ、さらに値段を下げる。都心部にある夜間大学への通学に利用している男性ユーザー(41)は、「個人宅の駐車場はさまざまで、老朽空き家のようだったときには一瞬不安を覚えたが、安かったので納得」と感想を述べた。
 一方で、需要に応じた値上げで収益の最大化も図る。昨秋のラグビーワールドカップ大会の際、味の素スタジアム(東京都調布市)試合当日の周辺宅の駐車場を、通常1日550円から6千円に値上げしたが、即予約で埋まった。
 「駐車場の登録料や工事代など、貸し手の負担は一切ない。顧客にもうけていただけるサービス」と、保険代理店「プラウド」(東京都新宿区)の大塚浩之社長(56)は期待を込める。「免許返納で自動車保険を解約されても、駐車場の登録で引き続きお付き合いいただきたい」
 それが、誰かの役に立つ場合もある。東京都日の出町の主婦(48)は、目黒区内の治療院に、足の不自由な母親(77)を連れて通っている。「以前は路上パーキングしかなく、空いている場所を探し回ったり、1時間ごとに車を移動させるのが不便だった」。それが、予期せず治療院と同じマンションの駐車場が登録された。「毎回予約できて安心。助かります」
 上京者にも活用されている。夫の転勤で長崎市から転居した世田谷区の主婦(34)は「東京の駐車場の(値段の)高さと少なさにびっくり」。ネット検索でakippaを見つけた。「慣れない東京の道も、予約してナビに従って走れば、確実に停められる。心の余裕が持てた」
 akippaは、競技場やレジャー施設の周辺で登録を増やしてきた。コロナの影響で今は静かな駐車場も、多くの車の出入でにぎわう日が早く復活することを願う。