【衝撃事件の核心】ソーセージの“入国”許すな 旅行客VS動物検疫所、戦いの行方は - 産経ニュース

【衝撃事件の核心】ソーセージの“入国”許すな 旅行客VS動物検疫所、戦いの行方は

スーツケースに肉製品などが入っていないか探す検疫探知犬のアルバート=11月21日、関西国際空港
肉製品などをかぎ当て、座り込んでハンドラーに合図する検疫探知犬のアルバート=11月21日、関西国際空港
関西国際空港で活躍する検疫探知犬のアルバートと、ハンドラーの岩永真希さん=11月21日、関西国際空港
 昨年初めて年間3千万人を突破するなど、右肩上がりに増えていく訪日外国人。門戸を開けば招かれざる“客”も来るもので…。昨年、国内で26年ぶりに発生した豚コレラ(CSF)は、旅行客が中国から持ち込んだ豚肉製品を感染源にウイルスが広がった可能性が指摘されているが、空港では手荷物から肉製品が見つかること自体は日常茶飯事だ。アフリカ豚コレラ(ASF)の脅威も迫る中、関西国際空港の「最後のとりで」動物検疫所の活動に迫った。(西山瑞穂)
探知犬が活躍
 関空の税関検査場。ターンテーブルから手荷物を受け取る乗客の間を縫うように、小型のビーグル犬が動き回る。国内持ち込みが禁止された肉製品や野菜果物をかぎ当てる「検疫探知犬」だ。次々においをかいでいたかと思うと、突如、中国から訪れた女性らのキャリーバッグの前に座り込み、探知犬を扱うハンドラーを見上げた。目当てのにおいをみつけた合図だ。
 持ち込み禁止品を持っているかはあくまで自己申告制。職員が同意を得てバッグを開けると、豚肉ソーセージや鶏肉加工品に加え、リンゴ、ナシ、キュウリ、トマト、米などの食材が次々と姿を現した。職員は女性らに放棄を求め、禁止品について説明した。
 関空で、こうした光景は珍しくはない。中国便では必ずといっていいほど手荷物で禁止品を持っている乗客がおり、関空に7頭配置されている探知犬が見つける肉製品は1日百数十キロになることもある。
 それを監視しているのが農林水産省動物検疫所だ。
 動物検疫所関空支所の中原一馬課長は「中国は旅行に食材を持っていくのが文化。スナック感覚で乾燥肉を食べる人が多く、留学生が故郷の味欲しさに持ち込む場合もある。中国便は増便が続き、緊張感は高まっている」と話す。
捨てた肉から感染?
 ハワイ土産の定番だったビーフジャーキーも含め、今では海外から個人が肉製品を持ち込むことはほぼ認められていない。ここまで敏感になるのは、旅行客が持ち込む肉製品には家畜伝染病のウイルスが潜んでいる恐れがあるからだ。
 実際、昨年9月に岐阜県から広がった豚コレラについて、農水省は中国周辺から持ち込まれた豚肉製品が感染源になった可能性を指摘している。豚肉製品が行楽地などで捨てられ、そのごみを野生イノシシが食べたことで最初の感染が起きた疑いがあるといい、その後、関東から関西まで8府県の養豚場に拡大した。
 豚コレラは人に感染することはなく、感染した豚肉を食べても人体に影響はないが、養豚業への打撃は深刻だ。日本養豚協会の松村昌雄会長代行は「殺処分への補償金が出ても、農家はブタを失うと元に戻るまで何年もかかる」と指摘。全国約4500戸の養豚農家全体にも対策費用などの負担がかかっており「ただでさえ後継者不足に悩んでいる中で、ずっと続けていこうという農家は半分ぐらいかもしれない」と漏らす。
取り締まりを強化
 さらに日本には今、有効なワクチンすらないアフリカ豚コレラの脅威も迫っている。すでに日本周辺の各国で発生しており、江藤拓農水相は11月26日の会見で「上陸した時点で最終ステージだ」と危機感をあらわにした。
 こうした状況を受け、動物検疫所は4月から対応を厳しくしている。肉製品が見つかれば、持ち主に警告書などを手渡した上でパスポート情報をデータベースに登録し、対応歴を蓄積。広報啓発に力を入れる一方、悪質なケースは積極的に警察に通報している。
 10月には、大阪府警が家畜伝染病予防法違反容疑でベトナム人夫婦を逮捕した。夫婦は平成29年夏ごろから、ベトナムから犬肉や豚肉製品などを繰り返し持ち込み、日本のベトナム料理店などに売りさばいていたが、対応を厳格化した今年4月以降、動物検疫所が夫婦の持ち込みを相次いで発見したことで逮捕につながったという。
 これらの肉製品からウイルスは検出されなかったものの、全国ではすでに、手荷物のソーセージなどからアフリカ豚コレラウイルスの遺伝子が見つかったケースが80件以上報告されている。今は水際で防いでいるが、いつ国内に侵入してもおかしくない状況だ。
 関空支所の酒井一彰次長は「関空は特にアジア便が多い空港。人が増える年末年始や春節に向け、侵入防止の体制をしっかり整えていく」と力を込めた。