【軍事ワールド】47年前の戦闘機がよみがえる 米空軍の「F-15イーグル」新規再生産・配備の理由 - 産経ニュース

【軍事ワールド】47年前の戦闘機がよみがえる 米空軍の「F-15イーグル」新規再生産・配備の理由

計画中のF-15「X」に最も近いとされるボーイング社の開発案「F-15アドバンスド」の模型。空対空ミサイルを多数抱え、ペイロード(武装搭載量)の多さをアピールしている=2018年11月(岡田敏彦撮影)
 47年前に初飛行した“クラシック”な戦闘機F-15「イーグル」を米空軍が新たに生産・配備する計画が明らかになった。米情報通信社ブルームバーグが2月中旬に報じたもので、2020年度予算から5年計画で総数80機の「新機」を発注するという。最新鋭のステルス戦闘機F-35が続々と生産、部隊配備されるなか、人間でいえば「中年オヤジ」が見直される理由とは-。    (岡田敏彦)
 最新鋭を差し置いて
 F-15は米国マクダネル・ダグラス社(現ボーイング社)が開発・生産。米空軍の主力戦闘機として長らく運用されており、現在も本家の米空軍をはじめ航空自衛隊やサウジアラビア、イスラエル各空軍などで多くが現役にあるとはいえ、試作機の初飛行は1972年。以後47年間の航空・軍事技術の進歩は著しい。
 しかも米軍は、レーダーに捉えられにくいステルス性を持った最新鋭の戦闘機F-35「ライトニング2」を続々と部隊配備中だ。欧州各国もF-35の導入を進めており、今年1月末にはオランダ空軍向け1号機が完成、同空軍へ引き渡された。また同月には製造メーカーの米ロッキード・マーチン社が300機目の完成と納入、米空軍ユタ州ヒル空軍基地への配備を発表するなど、最新機F-35の生産・配備は順調に進んでいる。にもかかわらず、旧式のF-15を再生産するには、3つの理由がある。
米空軍のF-15Cイーグル戦闘機。“更新”の時期が迫っている=2014年9月(岡田敏彦撮影)
 大型化を視野に
 最も大きな理由は「大型兵器を運べる」という点だ。F-35はステルス性を最優先して作られた戦闘機のため、ミサイルや爆弾は胴体下部のスペース(兵装庫=ウエポン・ベイ)に内蔵する方式を採る。
米空軍のF-15Eストライクイーグル戦闘攻撃機(米空軍提供)
 米軍が使用するミサイル類は多くがステルス化されておらず、レーダー波を反射するため、機体の内部に収める必要があったためだ。
 一方、F-15はステルス性を考慮されていない古い時代の設計のため、ミサイルや兵器類を翼や胴体下に剥き出しで吊す形で装備する。ミサイル類の長さや幅がウエポンベイの大きさに制約されるF-35とは違い、大型の誘導ミサイルも装備できるのは大きな利点だ。またエンジンもF-35が単発なのに対しF-15は双発で、簡単に言えば「よりパワフル」という特徴がある。
 米トランプ政権は昨年、中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱する動きを見せており、今年2月2日にはポンペオ米国務長官がINF全廃条約の破棄をロシアに通告している。今後、中・長距離ミサイルを中心とした兵器開発競争が進むのは必定で、こうした大型ミサイルを運用できる戦闘機の必要性は高まっている。F-35のように「ウエポン・ベイのサイズにミサイルを合わせなければならない」という制約がないのは、F-15運用のメリットだ。
 米軍事専門サイト「WAR ZONE」では、「(将来的に開発される)レーザー兵器などの指向性エネルギー兵器や、あるいは大型の監視センサー、巨大な対弾道ミサイル兵器の発射母機として、どの機体よりもF-15の最新バージョンがふさわしい」と説明する。
米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F-35Aライトニング2。胴体内に収る武装類はステルス機の特性上、量が限られていることから、F-15の価値が見直されたといえる=2018年7月、英フェアフォード基地(岡田敏彦撮影)
 適材適所とコスト
 もうひとつの理由は、適材適所という考え方だ。最新鋭ステルス戦闘機のレーダーに捉えられない神出鬼没ぶりは、敵対勢力の持つ旧来の戦闘機に対して無敵ぶりを発揮する。しかし米軍は、そんな状況が現出する大国同士の全面戦争が起こる可能性“だけ”を睨んでいるわけにはいかない。
 米軍の中東での作戦を見れば、空軍を持たないゲリラや反政府勢力に対する、言い換えれば軍事力や兵器、戦略などが全く異なる集団に対する「非対称戦」が中心となっている。重火器を持たない武装集団の制圧に、運用・整備で多額の費用がかかるステルス戦闘機を投入するのは割に合わない。「WAR ZONE」では、極論ながら「アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンが持つアヘン工場の警戒や、米本土の警戒監視にF-35は必要ない」と指摘する。
 さらに、故障や事故、あるいは敵対勢力の対空砲火といった「安価な攻撃」で、最新ステルス機を失い、かつステルス技術が漏洩する危険性もある。確かにF-35は空対空戦闘から地上攻撃まで何でも可能な「万能機」だが、こうしたリスクを考えれば、F-35に「何でもやらせる」のは対費用効果の面で疑問符が付く。
米空軍のF-15Cイーグル戦闘機。“更新”の時期が迫っている=2014年9月(岡田敏彦撮影)
 既存インフラ
 前述の2つは将来や可能性に基づく理由だが、現在の米空軍では切羽詰まった理由がある。現在運用しているF-15の“寿命”の問題だ。
 米空軍は単座のF-15Cと複座のF-15D、そして高度な地上攻撃も可能な戦闘爆撃機のF-15E「ストライクイーグル」を多数運用している。比較的新しい「E」以外のC、D型は現在米軍で約230機が運用されているが、電子装備の陳腐化など旧式化が課題となっており、ブルムバーグは「時間と費用を費やしてアップグレード」しても「数年後に(機体全体の老朽化で)廃棄せざるを得ない」と指摘する。車で言えば、タイヤなどの消耗品はもちろんエンジン補器類やサスペンションまで新品にしたあげく、2年後の車検を待たず廃車にするようなプランだ。それだけ金をかけるなら、いっそ新車を-と思うのは当然の選択だろう。
 だが車と違って、戦闘機の場合は操縦や整備、そして整備用の各種機器や工具までが専用で、機種を変えれば操縦者や整備員の再教育から始めなければならない。こうした「戦闘機を運用するインフラ」を考慮に入れれば、同じ機種を再生産し、新品を供給するという計画は、予算=コスト面で優れた選択肢だ。
 もちろん、一度廃した生産ラインを再設置するような案では、失われた治具を作り直し、熟練工を呼び戻すなど多くの作業が必要となり費用面で折り合わないが、F-15は違う。
 量産当初こそ採用国は米国のほか日本にサウジアラビア、イスラエルという「経済的に裕福な国」もしくは「軍事的脅威にさらされている国」に限られていたが、量産が進むにつれシンガポールや韓国などが採用を決め、ボーイング社セントルイス工場でのF-15生産は継続。現在も最新型のF-15SA(サウジアラビア向け)やF-15Q(カタール向け)製造のため生産ラインは稼働中だ。
米空軍のステルス戦闘機F-35Aライトニング2。F-15イーグル戦闘機はこの最新鋭機と「棲み分け」することになりそうだ=2018年7月、英フェアフォード基地(岡田敏彦撮影)
 その名は「エックス」
 米軍向けに再生産されるのは、カタール向け機材の「F-15Q」やボーイング社の自社開発案「アドバンスド」をベースにしたもので、E型(ストライクイーグル)の派生型である「F-15X」になる予定だ。
 旧来のC・D型からは大幅に電子機材の最新化が進んでおり、操縦席はメーター式の計器版から、スマートフォンやタブレットの画面を大型化したようなフラットパネルを採用した、いわゆるグラスコックピットに。レーダーは最新のAESA(アクティブ電子走査アレイ)式のAPG-82を採用。機体構造の強化などで22発の空対空ミサイルが搭載可能となり、戦闘時の運用を想定した場合は空対空ミサイル8発に加え、小型の精密誘導爆弾(滑空爆弾)GBU-39を28発搭載可能など、「クレイジーな積載能力を持つ」(WAR ZONE)という。
 一方で約10年前に計画された、F-15に限定的なステルス能力を持たせる「サイレントイーグル」計画の要素は取り入れられず、ステルス性は考慮されないままでの「再登板」となる。80機の嚆矢となる最初の12機を約12億ドルで取得する2020年予算案は3月上旬に提案される見込み。