PTAの加入は任意です…大津市教委が異例の手引書 - 産経ニュース

PTAの加入は任意です…大津市教委が異例の手引書

大津市教育委員会が作成したPTA運営の手引書。「PTA加入の任意性を伝えていない場合、法令違反になる場合がある」などと指摘している
 PTAの全国組織発足から今年で70周年を迎えた。近年は共働き世帯の増加などを背景に、強制加入や役員の押し付け合いなどの問題も起きている。そんな中、大津市教育委員会が望ましい運営方法などを示した手引書を作成して学校側に配布する異例の対応に乗り出し、注目を集めている。PTAは学校とは別の任意団体のため、教委が介入しないのが一般的だが、保護者の苦情が作成のきっかけになったという。一方、徳島市では民間によるPTAの業務代行サービスも登場。保護者の関わり方を含めPTAのあり方が変化している。(杉森尚貴)
違法性にも対処
 大津市教委が作成した冊子(A4判)は「PTA運営の手引き~誰もが参加しやすいPTA活動をめざして~」。10月下旬に市内の小中学校の校長らに配布した。
 手引では、強制加入や個人情報保護など7つの問題について、理想的な対応から違法性が問われる対応まで4段階(レベル2、1、0、マイナス)で説明している。
 例えば強制加入の問題では、「PTAは任意の団体のため入会手続きを学校園でなく、PTAが説明して行う必要がある」と明記。最も良い対応(レベル2)は、PTA会長らが入学説明会などで保護者から入会届を取得すること、それに次ぐ対応(レベル1)は、加入できない人には不加入の手続きを呼びかけること-としている。
 これより悪いのは、保護者らに意思表示する機会を設けないこと(レベル0)で、加入の任意性を説明しないのは、違法性が問われる最低の対応(レベルマイナス)とした。
 また、「学校が保護者への通告なしに個人情報をPTAに提供すること」などは違法性があると説明。問題がある場合は、教諭らが改革するよう提言している。
保護者の苦情を機に
 市教委生涯学習課の担当者は「共働き家庭の増加によってPTA加入率の低下が進む中、保護者から『役員を引き受けたものの、仕事が多く、何とかできないものか』『兄弟の情報が知られている』などの苦情や相談が増えている」と明かす。
 PTAの運営に介入するのは異例だが、市教委はこうした保護者からの苦情を踏まえ、「健全なPTA活動の促進を図るため、会員として参加する教諭の側にも意義を伝えるため手引書が必要だった」と説明。作成後は他自治体から問い合わせも寄せられている。
 保護者側の反応もよく、市PTA連合会の山中学会長(51)は「PTAはそれぞれ個別のルールがあって煩雑だったので、一般化してくれたのはありがたい」と喜ぶ。
 山中会長によると、同連合会では各地域のPTAに、会員制交流サイト(SNS)による会議の促進や、必要でないイベントの廃止を訴えているという。「昔は地域社会で子供を育てるのが当たり前だった。時代は変わったが、親が子供を思う気持ちに変わりはなく、(PTAの活動が)無理なくできるように一緒になって改善していきたい」と話す。
PTA代行サービスも登場
 様変わりするPTA。徳島市では、家事代行を手掛ける「クラッシー」という会社がPTA行事への出席などの代行サービスを行っている。植田貴世子社長(63)によると、年間40~50件の依頼があり、特に多いのが「PTAの会議出席と報告書の作成」や「朝の交通安全の呼びかけ」。作業内容によって基本料金は異なるが、1時間あたり4860円(交通費は別)という。
 米国ではPTAにあたる組織の会議は会社帰りなどアフター5に行う地域が多いというが、植田社長は「日本の企業では、PTA(活動がある)といえば眉をひそめる上司がまだ多いのが現状で、社会がもっと理解を示すべきだ」と強調。さらに、「保護者と学校がコミュニケーションを取るのは教育環境を整える上で非常に重要。PTA活動と生活の健全な両立に向け、社会全体が何ができるか早急に考えるべき時が来ている」と訴える。
PTAの発足と歴史
 PTAとは両親と先生の会を意味する「Parent-Teacher Association」の略で、保護者と教職員でつくる学校単位の団体。児童や生徒のためのボランティア活動を目的とする。
 公益社団法人「日本PTA全国協議会」によると、PTAは第二次世界大戦後の民主化政策によって誕生。昭和21(1946)年に連合国軍総司令部(GHQ)が米国のPTAの資料を当時の文部省に提示し、同省内に「父母と先生の会委員会」が設置された。当時も各地の学校に保護者会ができていたが、統一的な動きではなかった。
 翌22年に文部省が全国の知事宛てに「子供たちが正しく健やかに育っていくには、家庭と学校と社会とが、その教育の責任を分け合い、力を合わせて子供たちの幸福のために努力していくことが大切である」として、会の作り方などを通知。23年に全国組織「日本PTA結成促進準備委員会」が結成され、20年代に市町村や県レベルの組織が立ち上がった。
 その後、PTAは「学校週5日制」の要望を行ったり、国の政策審議会の委員になったりと、保護者の意見を政策に反映させる活動を通じ、教育現場の改善と発展に寄与してきた。
 70年をへてさまざまな歪(ひず)みも出ており、運営面では個々の問題に応じた見直しも求められている。