【テクノロジー最前線】家政婦ロボは見た…AI企業が描く家庭内のデジタル化 - 産経ニュース

【テクノロジー最前線】家政婦ロボは見た…AI企業が描く家庭内のデジタル化

プリファード・ネットワークによるお片付けロボットのデモ展示=10月15日、千葉市の幕張メッセ(原田成樹撮影)
プリファード・ネットワークスが開発したロボットが収集・利用するデジタル化された空間情報
おもちゃをおもちゃ箱に片付けるプリファード・ネットワークスのアルゴリズムを搭載したロボット=10月15日、千葉市の幕張メッセ(原田成樹撮影)
家事支援ロボットの意義を説明するプリファード・ネットワークスの岡野原大輔副社長(右)と奥田遼介・取締役兼最高技術責任者(CTO)=15日、千葉市の幕張メッセ(原田成樹撮影)
 国内最大級のIT関連展示会シーテックが19日まで開かれ、人工知能(AI)における国内有数のベンチャー、プリファード・ネットワークス(PFN、東京)がお片付けロボットを展示した。ハードウエア自体はごく普通の研究用ロボだ。それでも投資家の間で名の通るPFNだけあって海外も含め多くの報道陣が関心をみせる。一見すると大学の研究室レベルに見えるデモだが、日本でも有数の「ユニコーン企業」とされる同社はその先にブルーオーシャン(未開拓の市場)を見ていた。
 デモでは、「靴下は洗濯物入れに片付けます」「おもちゃはおもちゃ箱にしまいます」などと2台のロボットが声を発しながら、まるで3D版ルンバのように散らかったリビングルームを片付けていた。
 使用しているのはトヨタ自動車の生活支援ロボット「HSR」で、環境を認識したり、物体をつかんだりというソフトウエアを開発するための研究用プラットホームだ。17~21日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた「ワールドロボットサミット(WRS)2018」などのロボット競技大会で、人間を手伝うタスクを実施しており、とくに真新しいデモにはみえない。
 PFNは、代表者をはじめ、東京大学や京都大学などの博士号、修士号を持つ技術者がぞろぞろといるいわば、日本版グーグルのような研究開発型ベンチャーだ。配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズや民泊仲介大手のエアビーアンドビー(Airbnb)など未上場で評価額が10億ドルを超える技術系ベンチャーのことをユニコーンと呼ぶが、PFNも国内では有数のユニコーン企業としてしられる。
 同社の説明によると、ロボットは現在のAIの主流であるディープラーニング(深層学習)を用いて、周囲の環境を知る「目」と人間の命令を聞き取る優秀な耳を持っているという。
 確かにWRSで行われた競技会の出場ロボットよりも動きなどがスムーズに見えたが、WRS実行委員によるとWRSではロボット本体に搭載されたカメラやコンピューターのみでの勝負なのに対し、PFNのデモでは室内に設置されたカメラの映像も使うほか、ネットワークでつながったサーバーも利用しており、「条件が違う」と説明。ますます、このデモで示したいことが分からない。
 このモヤモヤを吹き飛ばしてくれたのが、このデモは単にロボットを動かしているというだけはなく、何がどこに置いてあるかというリアルの世界をデジタルデータとして整理しているというPFNの説明だ。「今は掃除や料理など、いま家にある仕事をいかにサポートするかがテーマとなっている。しかし、まだ家の中で行われていないタスクが生まれてくるだろう」(奥田遼介CTO)とし、聞いていると未来が広がってくる。
 これまでのロボット開発は、いかに人間の代わりをさせるかがテーマだった。料理中で手が離せない家人から「しょうゆを取って」と言われたら今のロボットはどうするだろうか。食卓や冷蔵庫、台所などありそうな場所を次々に探すのではないか。
 ところが、家庭をデジタル化すると、ロボット開発の概念は大きく変わる。ソースもマヨネーズも、ペットの犬がくわえて玄関に持っていってもすぐに分かるのだ。
 現在、文字情報で分からないことがあったら、まずインターネットの検索エンジンで調べるという人は多いと思うが、ロボットが全てを把握するようになれば、「整理整頓」の概念も大きく変わるだろう。眼鏡をどこで外したか気にすることもなくなるし、使ってない家電のコンセントも抜いていてくれるだろう。
 ロボットに勝手にしまってもらい、必要なときに出してもらうようにすれば、人間の想像を超えた整理法をしてくれるかもしれない。
 メディア向け説明会では、同社の共同創業者で副社長、岡野原大輔氏も登場し、「2020年ぐらいに少なくともロボットのアプリケーションを第三者が作れる開発ツールを提供したい」とビジネス展開構想を打ち上げた。
 インターネットの登場で知識を暗記する以上に、必要な知識にたどりついたり、知識を組み合わせたりする新たな能力が重要視されるようになってきているが、家庭内の情報がデジタル化されるようになれば、さまざまな個人が新たな「今はないタスク」を解くようになってくるだろうと話す。奥田CTOは加湿器をメンテナンスするアプリを入れれば、常にフィルターをきれいにして水をいっぱいにしてくれるという例を挙げた。
 2020年「家庭のデジタル化元年」が待ち遠しくなった。(WEB編集チーム・原田成樹)