この夏あったホントの話!! 群馬・埼玉県境「心霊」スポット、退治したのは…

 
インターネットで「心霊スポット」との風評に悩まされた群馬・埼玉県境にある下久保ダム(住谷早紀撮影)

 「ダム湖の下に集落が沈んでいる」「ダム建設作業で犠牲になった作業員の霊が出る」「昔、付近の廃屋で一家惨殺事件があった」-。群馬県藤岡市と埼玉県神川町の県境にある下久保ダム(神流(かんな)湖)周辺は、インターネットなどで「心霊スポット」との噂が広まり、夜な夜なダム周辺を訪れ騒ぐ若者が、地元住民を悩ませている。そんな風評を“撃退”するため、ついにダム管理所とタッグを組み、立ち上がったのは…。

噂の真相

 「そもそも、一連の噂は全くのフィクション。ダム工事の際も、人は死んでいない」。こう断言するのは、水資源機構・下久保ダム管理所の金山明広参事だ。

 昭和43年に完成した下久保ダムは、以前は「仮面ライダー」シリーズなどのロケも行われ、特撮の聖地とも言われてきた。しかし、周囲に民家が少なく夜は真っ暗になるためか、近年はインターネットなどで「心霊スポット」との噂が拡散し、全国的に知られるように。肝試しに訪れて騒いだり、近所の空き家で盗みを働く若者や、“心霊ツアー”と称してやってくるタクシー会社などが地元住民を悩ませていた。複数のテレビ局の心霊番組からオファーが殺到し、断ったこともあるという。

 しびれを切らした住民は平成23年、管理所に要望書を提出。以来、関係団体はダム周辺の木を伐採したり、橋の色を塗り替えたりするなどさまざまな対策を講じてきた。そして今回、満を持して始まった新対策に、金山参事は「若者たちに来ては『ダメだ』というのではなく、明るい雰囲気を作って悪いイメージを払拭したい」と話す。

闇切り裂く軽快なメロディ

 「♪ダムセイバー溢れ出す情熱と ダムセイバー希望をひとつに集めて」。

 夜間に車でダム湖を訪れた不埒(ふらち)者を待ち受けるのは、仮に幽霊がいたとして、裸足で逃げ出しそうな陽気すぎるヒーローソングだ。夜間、群馬県側の入り口を人が通ると、下久保ダムのご当地ヒーロー「鬼神戦隊ダムセイバー」のテーマ曲「ウオーターファンタジア」が大音量で流れ出す。

 「警報装置を設置し明るい音楽を流す」という案は、ダムファンから寄せられたという。ダム周辺の治安悪化に悩んできた下久保ダム管理所は、この案を採用し、今年3月に群馬・埼玉両方のダムの入り口に警報装置を設置。午後7時~翌朝午前6時に人の動きなどを感知するとスピーカーから音楽が流れるように設定した。埼玉県側では、ダムファンが作成した「ジョージマン音頭」が流れるという。

 軽快な曲調と歌詞で、気を風評被害を一掃する切り札としてスピーカーから流れる「ウオーターファンタジア」を作詞・作曲し、ボーカルも務めた神川町観光協会会長の村上賢一さんは「ダム周辺を通るときにこの曲が舞い降りてきた」と話し、「水は大事というテーマで作詞をした」と振り返る。

 「群馬・埼玉にまたがるこの地域が一緒に盛り上がるようにと思いを込めて作曲した。これを機に、悪評が減ってくれれば」と村上さん。ご当地ヒーローの新たな活躍で、特撮や心霊に代わる新たな「聖地」となる日も近い!?。(前橋支局 住谷早紀)