将棋の渡部愛女流王位が就位式 大好きな「コナン」ばりに難局切り抜け

 
謝辞を述べる渡部愛女流王位=9月5日(田中夕介撮影)

 将棋の渡部愛(わたなべ・まな)新女流王位(25)の就位式が9月5日、東京都千代田区のレストラン、日比谷松本楼で開かれた。女流棋戦「第29期女流王位戦五番勝負」で6月、当時女流五冠だった里見香奈(さとみ・かな)女流王位(26)を3勝1敗で破り、タイトル初挑戦で初タイトルを獲得した将棋界のニューヒロインの誕生とあって、ファンや棋士関係者約150人が祝福に駆けつけた。

名探偵

 華やかさの中で行われた就位式。渡部女流王位は、ピンク色の和服姿で臨んだ。

 日本将棋連盟の佐藤康光会長(48)があいさつに立った。

 「私も初めてタイトルに挑戦したのは王位戦。『女流』は、つかないんですが…。そのときのことを思い出します。時の第一人者(当時は谷川浩司王位)と一局一局、一時間一時間戦うことで吸収することが多かったと思います。それが今でも生かされている部分があります。渡部さんは今回、里見さんという絶対的な存在から一つ一つ吸収して戦われたと思っています」

 今五番勝負は1勝1敗で迎えた第3局、第4局とも熱戦になった。

 「渡部さんのツイッターには好きなものが書かれています。『うなぎ・はちみつ・サッカー・チェス・名探偵コナン』。今回、第3局は難しい状況の中、どう解決していくかという、まさに名探偵ぶりでした」

 渡部女流王位はその第3局、第4局を制し、女流王位を獲得した。

心折れずに

 続いて渡部女流王位が所属する日本女子プロ将棋協会(LPSA)の中倉宏美代表理事(39)がマイクを握った。

 「新しいヒロインが誕生し、いろいろな人が活躍できることは良いこと。彼女のことは高校生のときから知っていますが、プロ入りの際には苦労をかけてしまいました」

 渡部女流王位は高校卒業後、北海道から上京。同郷の中井広恵(なかい・ひろえ)女流六段(49)に憧れ、中井女流六段がいたLSPAに所属。LPSAは連盟から分離独立した団体で、渡部女流王位はLPSAが認定する「女流3級」となった。しかし、連盟は資格として認めず、連盟主催棋戦への出場はできなかった。翌年、特例として認められた。

 「そういった経緯がある中、心折れずに勉強を続けて頑張ってくれた。日頃は『どじっこ愛ちゃん』的なエピソードが満載ですが、将棋に関してはここ数年、覚悟が全然違う」

 タイトル獲得への強い意志を感じていたという。

 「ここぞという勝負に勝つ底力を、改めて感じました。タイトル保持者として追われる立場になりましたが、愛さんらしく明るく将棋を指していってほしいと思います」

 その後、連盟とLPSA双方から渡部女流王位に就位状が贈呈された。

阿波尾鶏のカツカレー

 そして、渡部女流王位が謝辞に立った。

 「女流2級になったのもこの女流王位戦でした。今回のタイトル戦も第1局が地元の北海道で開催ということもあり、本棋戦にはご縁を感じております」

 里見女流王位とは、練習対局でも公式戦でも一度も指したことがなかったという。

 「里見さんとは、タイトル戦まで行かないと当たることができないと感じていました。そこにたどり着くことを目標にやってきました」

 北海道での第1局は大逆転で勝ったが、1勝1敗に。第3局に勝ち、初タイトルに王手をかけた。

 「第4局は徳島県でした。すだちジュースや阿波尾鶏(あわおどり)のカツカレーなど地元の名産品は楽しみましたが、勝負としては一番大きなところを迎えていました。2勝2敗のタイに持ち込まれると厳しい結果が待っている。4局目で決めなくてはいけない」

 結果は、勝利した。

 「最後まで諦めず、自分らしく戦えたのが良かった。今、目を背けてはいけないのが最近の自分の成績。負けが込んでいて、課題がたくさんあります。対局、将棋を一番に考え、精進していきたい。将棋の普及の面でも努めていきたいと思います」

 女流棋士第1号でLPSA特別相談役の蛸島彰子(たこじま・あきこ)女流六段による乾杯の音頭で開宴。会場のレストランの名物であるカレーなど数々の料理を堪能。記念撮影のシャッター音が、あちらこちらから聞こえた。(文化部 田中夕介)

 渡部愛(わたなべ・まな) 平成5年、北海道帯広市生まれ。25年、女流2級でプロ入り。27年、第1回女子将棋チャレンジ杯で初優勝。翌年、2連覇を達成。29年、女流二段。30年、女流王位獲得により女流三段。