記事出稿元とのやりとりこそ校閲の醍醐味?

赤字のお仕事

 損害保険の記事の書き出し部分に、

 「高齢者向けの保障内容」

 と書かれていました。しかし、その後の記事には7カ所も「補償」と出てきます。ですから、「この書き出しのところも『補償』なのではないですか?」と出稿元の記者に問い合わせてみました。

 返事は「そのままでよい」。けれども、差し替えの原稿では「補償」と訂正されている。ままあることです。

 別の記事では…。

 米環境保護局が、石炭火力発電所などから排出される二酸化炭素の削減基準を緩和する新たな排出規制案を公表した、という記事の一部です。

 「規制を受けて風力や太陽発電などのクリーンエネルギーの導入が進んだが、新たな規制が導入されれば石炭火力発電などへの回帰が進む可能性がある」

 この中の「太陽発電」という部分について「太陽光発電」ではないかと思われたため、出稿部に問い合わせて確認しました。ところが、発電の種類には「太陽熱発電」もあるとのことで、記事は修正されませんでした。

 

 「ミャンマー最大の都市ヤンゴンの裁判所が、取材で不正に資料を入手したとして国家機密法違反罪に問われたロイター通信のミャンマー人記者2人に対し、それぞれ禁錮7年の判決を言い渡した…」

 こんな趣旨の記事中、「裁判はミャンマーの報道の自由を図る指標と見なされている」という部分がありましたが、その「報道の自由を図る指標」の「図る」はこの漢字でいいのでしょうか?

 「図る」=「意図、企図」という意味からすると、「報道の自由を意図する指標」「報道の自由を行おうと目指している目印」というような意味になるでしょうか。これで特に間違っているとも思えません。

 ですが、「はかる」にはほかにも、「測る」(測定、測量、推測)、「量る」(計量、推量)、「諮る」(諮問)、「謀る」(謀議、謀略)などと、意味や使い分けの違う漢字がたくさんあります。

 上記の記事の場合、文脈から考えれば「量る」「諮る」「謀る」の3つは除外してもよさそうに思います。

 

 しかし、「測る」で考えてみると、「報道の自由を測る指標」「報道の自由を測定する指標」と、こちらもごく自然に意味が通るように思います。

 原稿は結局、「報道の自由を図る指標」のまま、初校を通してしまいました。

 果たして、差し替えた原稿では…。

 「ミャンマーの報道の自由を測る指標」と修正されて出稿されてきました。

 このときも、やはり念のため、しつこいと思われても出稿部に確認してみるのがよかったようです。

 

 「斟酌(しんしゃく)」したり、「忖度(そんたく)」したりする必要は、全くないのですから。(い)