【スポーツ異聞】8場所連続休場から復帰の稀勢の里、現役続行へのノルマは… - 産経ニュース

【スポーツ異聞】8場所連続休場から復帰の稀勢の里、現役続行へのノルマは…

3日に行われた二所ノ関一門の連合稽古で玉鷲(右)を攻める稀勢の里=千葉県船橋市
阿武松部屋への出稽古で成長株の阿武咲(左)と精力的に稽古を重ねる稀勢の里=2日、千葉県習志野市
夏巡業中にご当地の茨城県龍ケ崎市を訪れた稀勢の里には復活を願うファンから大声援が送られた=8月9日
 大相撲秋場所(9日初日、東京・両国国技館)で、8場所連続休場中の横綱稀勢の里が現役続行を懸けて土俵に上がる。関係者の間に飛び交う声を総合すると、進退ラインは2ケタ白星で引退危機回避、皆勤しての勝ち越しや負け越しで来場所へ進退持ち越し、途中休場で引退という見立てが多い。長期休場の代償である相撲勘やスタミナの欠如は否めず、32歳となったベテラン横綱にとっては薄氷を踏むような毎日となりそうだ。
 一つの目安になるのは、7月の名古屋場所後に横綱審議委員会(横審)が示した見解だ。年6場所制の横綱として単独史上最長の連続休場となった稀勢の里に対して横審の北村正任委員長(毎日新聞社名誉顧問)は「秋場所に出るだろう。出る以上はそれなりの土俵を務めてほしい」と注文をつけた。
 「それなりの土俵」の解釈はさまざまだ。史上最多の優勝40回を誇る横綱白鵬は、「横綱の勝ち越し」として12勝を挙げることがある。12番勝っていれば最終盤まで優勝争いに絡んでいる可能性は高く、横綱の務めを果たしているといっていい。現役続行に異論は出ないだろう。
 10勝以上でも引退危機は回避できそうだ。今年初場所に進退を懸けた鶴竜は11勝で引退危機を乗り切った。当時の鶴竜は優勝3回(現在は5回)。現在優勝2回の稀勢の里と実績は近く、2ケタ勝てば及第点との見方も十分できるだろう。
 また、同じ二所ノ関一門の尾車親方(元大関琴風)は「秋場所を何とか皆勤して乗り越えてほしい」と発言。進退ラインに触れないのは、星勘定にかかわらず15日間を戦い抜けばさび付いた相撲勘やスタミナを取り戻せると考えているためだ。負け越しても九州場所で再チャレンジの機会が与えられる可能性はある。
 一方、途中休場した場合、状況は厳しくなりそうだ。皆勤のハードルも低くはない。前半戦で負けが込むようだと、引退の圧力が高まることが予想される。復活を待ち望む尾車親方も重々承知で、「序盤がカギを握る。3日間ぐらいを乗り切れば、うまくいくんじゃないか」と指摘する。
 その序盤を乗り越えるのが容易ではない。4日の稽古で豪栄道に3勝8敗と圧倒されたのを見守った元横綱で解説者の北の富士勝昭氏は「そう簡単にはいかない。苦しいは苦しい」と悲観的な見解を示した。
 稀勢の里ほど土俵と真(しん)摯(し)に向き合ってきた力士はなかなかいない。その稀勢の里が名古屋場所休場を決断した際に、「すべてを懸ける」と誓ったのが秋場所。待っているのがいばらの道であろうとも、力士人生の土俵を割るその瞬間まで全力で戦い抜く。