【政界徒然草】自民党竹下派、総裁選めぐる長い夏 竹下亘会長は「首相支持多数」で衆参一本化を断念「僕の力不足…」 - 産経ニュース

【政界徒然草】自民党竹下派、総裁選めぐる長い夏 竹下亘会長は「首相支持多数」で衆参一本化を断念「僕の力不足…」

自民党総裁選にあたり事実上の自主投票とすることを決めた竹下派の臨時役員会後、記者団に囲まれる竹下亘会長=8月8日、東京・永田町
自民党竹下派の会合で、総裁選にあたり事実上の自主投票とする方針を正式に表明する竹下亘会長(中央)=8月9日、長野市(田中一世撮影)
自民党竹下派の夏季研修会に参加する同派議員ら。竹下亘会長は総裁選に言及しなかった=9月2日、長野県軽井沢町(田中一世撮影)
自民党竹下派の臨時役員会に臨む竹下派会長代行の吉田博美参院幹事長=8月8日、東京・永田町
自民党竹下派の臨時役員会に臨む竹下派会長代行の茂木敏充経済再生担当相=8月8日、東京・永田町
自民党総裁選の選挙対策本部発足式で気勢を上げる安倍晋三首相(中央)ら。麻生太郎、岸田文雄、石原伸晃各氏ら派閥領袖級が顔をそろえた=9月3日、東京都千代田区(春名中撮影)
自民党総裁選に出馬する石破茂元幹事長の選対会合で気勢を上げる国会議員=9月3日、国会
 自民党総裁選が7日に告示され、20日に投開票が行われる。安倍晋三首相(党総裁、63)の圧倒的優位の中、話題を集めたのが第3派閥・竹下派(平成研究会、55人)だ。神経戦と迷走を続けた末、事実上の自主投票となったこの1カ月間あまり、いったい何が起きていたのか-。
岸田氏不出馬で風雲急
 7月24日午後3時半ごろ、地元・島根にいた竹下派会長の竹下亘総務会長(71)の電話が鳴った。岸田文雄政調会長(61)からだった。
 「立候補しない。今日の夕方、記者会見します」
 こう告げられた竹下氏は「これで首相には乗れなくなった」と思った。竹下氏は総裁選が一方的になることを望まなかった。「安倍1強」と揶揄(やゆ)され、来夏の参院選にマイナスに働くと考えたからだ。岸田氏の不出馬は誤算で、石破茂元幹事長(61)を支持する意向を固めた。
 周囲には「誰を支持するか、まだ言える状況ではない」と語っていたが、発言内容には変化がみられた。
 竹下氏は首相の外交手腕を高く評価し、北朝鮮問題の解決について「多分、安倍首相にしかできない」と語っていたが、7月30日の講演では石破氏支持を示唆した。
 「派閥全盛の時代には主流派、非主流派の軋轢(あつれき)が弊害になることもあったが、今はない。堂々と総裁選を戦い、結果が出たら全員一致で(総裁を)支える」
衆院は首相支持多数
 竹下派参院(21人)は7月31日、ホテルに幹部らが集まり、石破氏を独自に支持する方針を一足早く決めた。参院側を束ねる吉田博美参院幹事長(69)が、政治の師である青木幹雄元参院議員会長(84)の意向をくんだ上での判断だった。
 竹下氏は石破氏支持で派を一本化させる思いを強めた。ただ、全員の意向を聞いて最終判断しようと考えた。8月2日、永田町の派閥事務所に衆院議員(34人)を集め意見聴取した。
 「トランプ米大統領と対等に話ができる首相を代え、また『初めまして』からやるのか」(木原稔氏)
 「外交成果が上がっているのに安倍政権から離れる選択肢はない」(渡辺博道氏)
 7割以上が首相を支持・評価し、石破氏支持が少ない現実を突きつけられた。会長代行の茂木敏充経済再生担当相(62)や事務総長の山口泰明党組織運動本部長(69)ら首相に近い幹部は事前に出席者に「根回し」していた。竹下氏はそうした動きをしなかった。
衆参一本化を断念
 8月4日、竹下氏は那覇市で同派の西銘恒三郎衆院議員(64)のパーティーに出席し、総裁選を消化試合にすべきではないとの考えを示した。だが、直後に西銘氏が「私は安倍首相(支持)。竹下親分も安倍首相と言うかなと思っている」と牽制した。竹下氏はステージ下で苦笑いしていた。
 8月7日には吉田氏との会談に臨んだ。吉田氏は平成研究会が大半の総裁選で対応が割れてきた経緯から「無理にまとめるのは難しい」と事実上の自主投票を勧めた。竹下氏はこの日も議員の聴取を行ったが、結果は同じ。「自主投票にするしかない」との意向を固めた。後日、周囲に「あれほど首相支持が多いとは思わなかった」と語った。
茂木、山口両氏らが主導
 8月8日、竹下派は総裁選対応を決める臨時役員会を非公開で開いた。派閥事務所は空気が張り詰めた。
 「衆院は首相支持が多い。一本化というなら首相でやっていただきたい」
 こう口火を切ったのは山口氏だった。竹下氏は「私が一本化すると言い続け、いろんなハレーションを起こした」と反省の弁を口にした。その後も首相に近い幹部が次々と発言し、竹下氏は孤立気味となった。終盤、茂木氏が報道陣に発表する声明案を読み上げた。
 「『衆院は大勢が安倍総裁支持、参院は吉田参院会長に一任』という意見を共有し、その方向とすることで決定した-」
 すかさず山口氏が「異議なし!」と発言し、拍手が起きると流れは決まった。事実上の自主投票だが、首相支持の幹部は「衆院は安倍総裁支持が大勢」の一文を入れ込む戦果を得た。
 竹下氏は個人的な石破氏支持を表明したかったが、他の幹部に事前に「派閥の会長の発言は影響が大きい」と反対された。ふだん愚痴や弱音を吐かない竹下氏は周囲にこう漏らした。
 「わが派はずっと総裁選の対応がバラバラだったから、今回は『一本化したい』という思いはあった。でも僕の力不足だった…」
派閥研修会で沈黙
 8月31日、竹下派参院は石破派(水月会、20人)との合同選挙対策本部を発足させた。吉田氏は全国高校野球選手権大会で準優勝した金足農(秋田)を引き合いに「さわやかな政策論戦」を石破氏に求め、それぞれが本格始動した。そんな中、竹下派は9月2日、長野県軽井沢町で、恒例の夏季研修会を開いた。
 「(講師の)話をじっくり聞き、政策を進める上で大いに参考にしたい」
 こう述べた竹下氏は1分足らずのあいさつで総裁選に触れなかった。5日前の同派役員会で吉田氏に「個人の意見も言わないほうがいい」と進言されていた。
 「人柄の竹下、政策の茂木、政局の吉田。平成研究会は3人も注目された」
 研修会後の懇親会で吉田氏がこんなジョークを飛ばすと、ようやく笑いが起きた。 (政治部 田中一世)