世界初、自動運転タクシー体験記「思いのほかスムーズ」 インバウンド需要に資するかも - 産経ニュース

世界初、自動運転タクシー体験記「思いのほかスムーズ」 インバウンド需要に資するかも

自動運転で公道を営業走行するタクシーの実証実験=8月27日、東京都千代田区
自動運転タクシーの実証実験で、乗車するためにスマートホンを車両のQRコードにかざす利用客=27日、東京・大手町(荻窪佳撮影)
自動運転タクシーの実証実験で、営業走行前に準備するドライバーと補助者(手前)=8月27日、東京・大手町
報道陣を乗せ出発する自動運転タクシー=8月25日、東京都千代田区(大泉晋之助撮影)
 8月27日に東京都内で始まった自動運転タクシーサービスの実証実験。乗客を乗せた自動運転タクシーが公道を営業走行するのは世界初の試みで、長年、人類の足となってきた自動車は新時代を迎える。実証実験に先立ち行われた報道陣向けの試乗会に、自動運転自動車初体験の記者が参加。少し怖さを感じていた乗車前だったが、その乗り心地は思いのほかスムーズだった。2年後に迫る2020年東京五輪・パラリンピック前の商用化を目指しているが、実現すれば東京大会目当てに訪れる海外からの訪日客にも注目されそうだ。(大泉晋之助)
遅すぎず速すぎず…
 実験はタクシー大手の日の丸交通(東京)と自動運転ベンチャー企業のZMP(同)が行った。都が両社に1千万円を補助している。運転席には緊急時に備えて日の丸交通の運転手が座るが、ハンドル操作やアクセル、ブレーキは自動運転。トヨタ自動車のミニバン「エスティマ」をベースに、ZMPの自動運転システムを搭載した。
 実験区間は「大手町フィナンシャルシティグランキューブ」(東京都千代田区)と「六本木ヒルズ」(東京都港区)間の約5・3キロだが、報道陣の試乗会では同区間の一部を走った。
 8月25日早朝、スタート地点にたどり着くと、自動運転タクシーがすでに止まっている。バンパーなどにセンサーやカメラなどが複数備わっているが、外見は普通のミニバンタイプのタクシーとほとんど変わらない。早速、後部座席に乗り込むと、運転席には、緊急対応に備えるプロのタクシー運転手が座る。助手席にも補助者の姿が。
 運転席と助手席の裏側にはタブレット端末が備え付けられ、片方には周辺の道路と交通の混雑状況が映し出され、もう片方は乗車完了や運賃支払いなどを操作するのに使用する。
 準備が完了すると走行開始。スタート地点となった高層ビルの車止めから公道に出て、自動運転が始まった。早朝とはいえ、首都の中心部。それなりの交通量があるが、遅すぎず速すぎず法定速度で、車間距離も十分にみえる。
 実験ルートは交差点が多く右折・左折レーンが次々に現れるが、ハンドルさばきはスムーズだ。右折、左折ともに問題なくこなし、時には車線変更も。走行中、周囲を走る乗用車の動きが気になり、何度も周囲を見回してしまったが、特段「はっ」とする場面には出くわさなかった。
まだまだ課題はあるものの…
 一方、運転手が触らなくてもステアリングがくるくると回るさまは、昭和生まれの記者には少々奇異にも映る。また、ブレーキのかけ方は人間のそれよりも少々荒い。そのことを同乗したZMPのスタッフに指摘すると、「今後の改良点です」と話した。
 緊急対応のため乗車しているプロの運転手によれば、「ブレーキを含め、動きはかなり改善された。最初の頃は、私も乗るのがおっかなびっくりだった」とのことだ。短期間の性能改善に目を見張ったという。
 ただ、記者の安心感は緊急対応の運転手が目の前にいることが大きい。完全無人で利用者の安心感を得られるかは今後の課題だ。
 実験の蓄積でさらに性能を向上させていく方針だが、両社だけでは商用化につなげることは不可能だ。実際に事業を始めるためには道路交通法などの関係法の改正が必要になるほか、事故やトラブルの際の責任の所在も今後整理していかなければならない。また損害保険業界の関係者からは「新たな保険商品も必要になるだろう」との声も出ている。
 こうしたハードルはあるものの、日の丸交通の富田和孝社長によれば「タクシー業界の人手不足は深刻」としており、自動運転は業界にとってチャンスが増えるとみられる。また、増加する訪日外国人のタクシー需要が今後伸びるとみられる中、人間の運転手にとって各国の利用者への言語対応は課題だ。しかし、自動運転なら、自動運転タクシー利用に必要な専用アプリを多言語対応してしまえば、それで済むことになる。
 数年前、新宿のロボットレストランが訪日観光客の間で人気となり話題を集めたが、今後の開発次第で、自動運転タクシーも同様の観光資源になり得る可能性を感じさせた。
 また従前から指摘があるように、高齢者や過疎地での移動対応などにも自動運転タクシーの実現は役立ちそうだ。
 実験は8月27日~9月8日までだが、両社は今後も商用化に向けた実験をさまざまな場面で進める予定という。