【経済インサイド】「テレワーク」猛暑で脚光 企業文化超え東京五輪の混乱解消の“切り札”となるか - 産経ニュース

【経済インサイド】「テレワーク」猛暑で脚光 企業文化超え東京五輪の混乱解消の“切り札”となるか

三井不動産が運営するシェアオフィス「ワークスタイリング」の内部
三菱地所が、和歌山県白浜町に設置する「南紀白浜ワーケーションオフィス(仮称)」の完成イメージ図
テレビ会議に参加する野田総務相(右端)=7月24日、東京都中央区
積水ハウスはモデルハウスの「サテライトオフィス」化をにらみ、展示場でテレワークを行った=7月23日、千葉県市原市
共有オフィスで同僚と打ち合わせをする富士通の社員=7月、横浜市西区
平日の昼間は閑散としているJR千駄ケ谷駅周辺だが、東京五輪の期間中は大混雑が予想される(伊藤俊祐撮影)
 働き方改革の推進に伴って、職場に出勤せず、インターネットを使って自宅や共有オフィスで仕事をする「テレワーク」の取り組みが広がっている。総務省が7月に実施した全国イベント「テレワーク・デイズ」には1700近い団体が参加。前年の8割増という実績を残した。一般的な認知度は決して高くないが、2020年東京五輪・パラリンピックや猛暑が後押しする格好となっているようだ。
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 「五輪期間中、本社ビルの周辺は人であふれて車も動かなくなることも予想される。通常業務ではなく本社の受け付けでジュースでも売った方がいいのでは」。冗談交じりにこう語るのは、「ライオンズマンション」で有名な大京の小島一雄社長だ。
 本社(東京都渋谷区)の最寄り駅の一つが、東京五輪メーン会場である新国立競技場の「玄関口」であるJR千駄ケ谷駅と都営地下鉄大江戸線の国立競技場駅。両駅から徒歩約8分の場所にあり、周辺を含め約1000人のグループ社員が働いている。
 大京を除き、周辺エリアに本社を構える大企業はない。そんなこともあって千駄ケ谷駅の乗車人員は1日当たり1万9015人と少ない。JR東日本が管轄する駅の中では200番目で、首位の新宿駅のわずか5%という水準だ。東京都内の知名度が高い駅で千駄ケ谷を下回るのは、武蔵野線の府中本町(府中市)や南千住(荒川区)など限られている。
 しかし、五輪期間中は通常と異なる光景に直面することになる。新国立競技場の収容人数は8万人で、その多くが千駄ケ谷駅を利用するとみられるからだ。時間帯によってはホームや改札に人があふれるのは必至で、大京の社員も混乱に巻き込まれ、日常業務に支障をきたす可能性は大きい。
 対策を講じるため同社が本格的な導入を検討しているのがテレワーク。既に在宅勤務制度を導入し、さいたま市にサテライトオフィス(出先拠点)を開設したほか、今回のテレワーク・デイズに参加し、新しい働き方を検証した。
 ユニークな形のテレワークを取り入れる企業もある。ソフトウエア開発のインフォテリア(東京都品川区)は最高気温の予想が35度以上の「猛暑日」となった場合、テレワークを実施。スマートフォンを通じて社員に出勤しなくてもよいと通知する。
 テレワークの一環として「ワーケーション」という働き方にも注目が集まっている。仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を組み合わせた欧米発の造語で、休暇や研修を兼ねてリゾート地に短中期的に滞在し、仕事をすることを指す。
 ワーケーション事業に参入したのが三菱地所。和歌山県、同県白浜町との間で進出協定を結び、年内に白浜町にオフィスを開設。入居企業がワーケーションできる環境を構築する。
 ワーケーションの受け入れに力を入れる白浜町が設置したオフィスの1区画・約60平方メートルを三菱地所が賃借。内装工事して「南紀白浜ワーケーションオフィス(仮称)」を開設する。同社は研修型や有給消化型といった各種プランを用意し、運営する。同社の吉田淳一社長は「日本の地域産業の発展に貢献するとともに、事業領域を拡大したい」と話している。
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 テレワーク関連産業の裾野も広がっている。代表事例が同じスペースを複数の利用者が共有する「シェアオフィス」事業だ。
 三井不動産は10分単位で利用でき、スマホの専用アプリで簡単に社員の勤怠管理ができる施設を「ワークスタイリング」というブランドで展開。全国31カ所で運営している。今年初めの契約法人は30社超に過ぎなかったが、働き方改革に対する注目度の高まりにより、わずか半年で約200社まで拡大した。
 東京急行電鉄は「ニューワーク」というブランドで事業を展開。提携店も含め全国のネットワークが100店舗を突破した。会員登録数は5万人を超え、その多くが週に1回程度、通勤ラッシュの回避を目的として朝夕に自宅近くの店舗を利用。移動時間の短縮や業務効率化につながっているという。
 積水ハウスグループの積和不動産は昨年、「BIZ SMART(ビズ スマート)」というブランドで事業を立ち上げ、現在は代々木や神田など都内でシェアオフィスを開設している。また、積水ハウスは自社のモデルハウスをサテライトオフィスとして活用することを視野に入れる。テレワーク・デイズの期間中は千葉県市原市在住で都内に通う社員が、同市内の展示場でテレワークを実施した。
 ただ総務省によると、従業員100人以上の企業を対象にした29年の調査で、テレワークを導入しているケースは13.9%にとどまっている。「テレビ電話などの初期投資がネック」といった指摘がある一方、ある大手企業トップは「日本企業は対面でのやりとりを重視する傾向が強い。こうした企業文化を変える必要がある」と話す。本格普及に向けての道のりは決して平坦(へいたん)ではないようだ。(経済本部 伊藤俊祐)
 テレワーク タブレット端末やパソコンを活用し、職場に行かず自宅や共有オフィスで仕事をする働き方。通勤時間を削減できるほか、介護や育児の両立にも有効とされる。企業にとっては人手不足の中、働き方の選択肢を増やすことで社員の離職防止にもつながり、大企業を中心に導入の動きが広がりつつある。情報漏洩(ろうえい)の防止や労務管理の徹底が課題となる。