河野太郎外相、専用機は断念したものの…来年度チャーター機代10億円計上 職員へのしわ寄せ懸念も

外交安保取材
8月24日、米ロサンゼルスのハリウッドでジャパン・ハウス全館開館の記念イベントに参加した河野太郎外相(右から2人目)や「X JAPAN」のYOSHIKIさん(左)ら(共同)

 外務省は平成31年度予算の概算要求で、河野太郎外相(55)が意欲を示していた外相専用機の導入を断念し、チャーター機の借り上げ代として30年度当初予算(6600万円)比14倍超の9億6千万円を計上した。新年度から使われるチャーター機の実際の費用は12月の予算編成に向けた財務省との査定次第だが、河野氏が今秋の内閣改造で留任すれば海外訪問はさらにハイペースになりそうだ。

中国がライバル

 「国際的な問題が増える中、この1年間の海外出張は日本の外相としてギリギリ最低限だ。これ以上海外出張を減らせば日本外交の影響力をそぐことになる。今後どなたが外相になるにしてもこのレベルを下回ることはあり得ない」

 概算要求が締め切られた8月31日、河野氏は記者会見でチャーター機代が大幅に増えた理由についてこう訴えた。自民党総裁選(7日告示、20日投開票)後は内閣改造が想定され、河野氏が留任しなければチャーター機は新外相が使うことになるのを踏まえた発言だが、チャーター機代計上の作業は徹頭徹尾、河野氏の要求に沿った。外務省内では「河野氏は他人が新たなチャーター機を使うことは考えていない」(幹部)との見方がもっぱらだ。

 ただ、河野氏の外相専用機の断念は一筋縄ではいかなかったようだ。会計課は「納得してもらうまで相当説明した」と振り返る。

 河野氏は(1)北米までノンストップで行ける航続距離がある(2)中古の航空機購入で費用抑制-の2点を指示した。航続距離が北米まである飛行機ならば、中国による巨額の経済支援で台頭する中東もアフリカもカバーすることが可能だ。日本の外相の2倍以上のハイペースで外国を回り、河野氏が“ライバル”視する中国の王毅外相に少しでも追いつくには不可欠となる。

 航空機購入について、河野氏は当初「中古なら買っても安いのでは」とかなりこだわったという。だが、格納庫の確保と維持、機体の修繕費などが発生し、総額は100億円を超える。外務省は来年3月に退役する政府専用機の活用も検討したが、日本航空、全日本空輸ともに「あり得ない」と反対したという。社会保障費の膨張など歳出増に歯止めがかからない中、大幅な支出増を伴う航空機購入は難しいと判断した。

 チャーター機代は、河野氏の1年間の実績を基に計算した。昨年8月3日の外相就任から今年8月26日まで河野氏の訪問数は47カ国・地域(延べ66カ国・地域)で、出張日数は154日、総飛行距離は59万1837キロメートル(地球約14・8周分の距離に相当)。中国や韓国など多くの直行便がある国は原則チャーター機を使わず、来年度の外相の海外出張の飛行時間の上限を500時間程度とした。

 三菱重工の子会社である三菱航空機が開発した国産初のジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)やホンダの小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」といった“日本の顔”の活用も検討したが、ともに航続距離は3千キロメートル程度で、東京から8千キロ以上離れる北米には届かず、導入は見送られた。予算成立を前提に競争入札を経てチャーター機代は確定するが、航続距離が長いジェット機のチャーター機代を抑制するには限界があり、約10億円の予算要求も「かなりシビアに見積もった」(会計課)結果という。

 ただ、チャーター機導入で「外相の行動力をお金で買う」(外務省)一方、職員の負担増の懸念は依然残っている。チャーター機導入で外相の行動範囲が広がれば職員の外交も活発になるのは自然だが、職員の移動費の大幅増は難しい。

試行錯誤続く

 外務省は31年度予算で、職員の旅費について30年度(約31億円)比3割増の約40億円を要求した。ただ、これは来年6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議や、195カ国に招待状を出すことを想定している10月22日の「即位礼正殿の儀」(即位の礼)など国内で開催される国際会議や式典準備のための出張に伴う費用だ。

 旅費は中央省庁全体で総額が決められている上、「公務員に対する国民の批判も考慮し、相当厳しく査定する」(財務省)ため、来年度のやりくりが一層厳しくなるのは必至だ。

 河野氏の外相就任後、職員はビジネスクラスからエコノミークラスにし、部局ごとに出張人数を制限するなどの影響が出ているが、省内からは「さらに出張の自粛が続けば知見も人脈も深まらない。職員の士気が下がらないか心配だ」との声が上がる。チャーター機導入で外相の海外出張が増えれば、同乗する一部幹部を除き、経費節減のしわ寄せが広がる可能性がある。

 日本が途上国への経済支援を武器に台頭する中国に対抗しうる外交力を維持するため、河野氏が世界を飛び回るためなら、チャーター機代の10億円は必要経費だろう。だが、河野氏が奮闘する足元で職員の負担が増え、士気が下がることになれば「日本外交の足腰を強くする」(河野氏)ことに逆行しかねない。いっそのこと、日本外交の現状に強い危機感を持つ河野氏であれば、財政当局に中央省庁全体の旅費の見直しを求めても、“おねだり”とはいわれないだろう。

 政府開発援助(ODA)の抜本的な見直しなど河野氏が主導する外務省改革は緒に就いたばかりだ。しばらくは続くであろう「河野外交」の試行錯誤を今後も見守りたい。 (政治部 小川真由美)