【経済インサイド】東電の浮沈握る「柏崎刈羽原発」再稼働 地元・新潟県民の不信感は解消できるのか - 産経ニュース

【経済インサイド】東電の浮沈握る「柏崎刈羽原発」再稼働 地元・新潟県民の不信感は解消できるのか

新潟県の東京電力柏崎刈羽原発の6号機(右)と7号機
初会談に臨む東京電力HDの小早川智明社長(左から2人目)と新潟県の花角英世知事(右から2人目)=8月2日、新潟県庁(森田晶宏撮影)
新潟県柏崎市の桜井雅浩市長(左端)と会談する東京電力HDの小早川智明社長(右から2人目)=8月2日、柏崎市役所(森田晶宏撮影)
新潟県刈羽村の品田宏夫村長(左端)と会談する東京電力HDの小早川智明社長(右から2人目)=8月2日、刈羽村役場(森田晶宏撮影)
 東京電力ホールディングスが経営再建の柱として位置づけるのが、柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市、刈羽村)の再稼働だ。全7基の原子炉があるが、特に出力の大きい6、7号機は昨年12月、再稼働の条件となる原子力規制委員会の審査に合格し、再稼働に向けた地元同意が焦点となっている。ただ、6月に就任した新潟県知事は県民の東電への不信感に言及。立地自治体の柏崎市長は1~5号機の廃炉計画の策定を求めている。再稼働に向けた道筋は見えていない。
8分足らずの初会談
 「何にも増して安全が最優先、ということで取り組んでいる」
 「それは言葉通りに受け止める。さまざまな行動と実績で示してほしい」
 8月2日、新潟県庁で開かれた東電の小早川智明社長と新潟県の花角英世知事の初会談。大勢の報道陣が見守る中、2人はこんな会話を交わした。東電側は早くから花角氏との面会を申し入れていたが、花角氏が6月の就任直後から多忙が続いたこともあり、就任から2カ月弱が過ぎたタイミングでの開催となった。
 初会談で小早川氏は、東電が再稼働を目指す柏崎刈羽6、7号機についても簡潔に言及。昨年12月に規制委の審査に合格し、「工事計画認可の取得と必要な安全対策工事を進めているところだ」と説明した。
 もともと小早川氏の来訪があいさつ目的だったということもあり、会談時間はわずか8分足らず。終了間際に小早川氏が「ぜひ一度、柏崎刈羽のご視察も」と呼びかけると、花角氏も「検討します」と応じた。8月30日には、花角氏が9月6日に柏崎刈羽原発を視察することが発表された。
 東電にとって新潟県は柏崎刈羽原発があるだけでなく、信濃川水系の9カ所の水力発電所は自社の全水力発電量の約15%を占めるなど、発電事業を営む上ではとりわけ重要な地域だ。
 歴史も長く、前身企業を含めれば新潟県とは90年以上の関わりがある。平成27年4月には新潟市内に「新潟本社」を設立した。しかし、新潟県は東京電力の供給区域ではなく、あくまでも東北電力のエリアだ。
柏崎市長からの「宿題」
 福島第1原発事故に伴う賠償や廃炉などで巨額の資金が必要な東電にとって、柏崎刈羽6、7号機の再稼働は生命線だが、小早川氏は柏崎市の桜井雅浩市長からある「宿題」を出されている。柏崎刈羽1~5号機の廃炉計画の策定だ。
 28年に初当選した桜井氏は昨年6月、6、7号機の再稼働を容認する条件の一つとして、2年以内に1~5号機の廃炉計画を提出するよう東電に要請した。
 「市長からかねがね問いかけのあった1~5号機の廃炉計画の策定に関しては社内で検討しているところだ」。小早川氏は花角氏との初会談を終えるとその足で柏崎市役所を訪れ、桜井氏にこう説明。それまで小早川氏は「電源構成」という言葉を使っていたが、この日は「1~5号機の廃炉計画の策定」と直接的な表現を用いて踏み込んだ。
 桜井氏は「何基(廃炉)かということにこだわるつもりはない。柏崎市民のリスクが、トータルで軽減することを求めている」と語る。東電は来年6月までに一定の回答を出す考えだが新たな懸案ともいえる。
 昨年5月に策定した東電の「新々・総合特別事業計画」では、柏崎刈羽6、7号機が順次再稼働すると仮定した上で、2~4号機の再稼働を織り込む場合と織り込まない場合に分けて収支の見通しを試算。1~5号機の全てもしくは一部を廃炉とするとなれば、こうした収支の見通しも修正を余儀なくされかねない。
「県民に不信感ある」
 規制委は7月、各電力会社が原発事故を想定して昨年度に行った対応訓練の評価結果を公表。東電は9つの評価項目のうち、規制委が重要視する項目で評価が低かった。未曾有の福島第1原発事故を起こした当事者の東電が低い評価となったことの衝撃は大きい。
 これに関連して花角氏は小早川氏との初会談から4日後の8月6日に世耕弘成経産相を訪れた際、「東京電力という会社に対する県民の不信感というものがあるように思う」と語った。
 経産省幹部も「東電が不信感にどう応えるかが問われている」と指摘する。
 一方、新潟県は米山隆一前知事の時代から、原発事故に関する独自の「3つの検証」(事故原因、健康と生活への影響、安全な避難方法)を進めており、花角氏も引き継ぐと表明した。
 ただ、各検証委員会の開催ペースは数カ月に1回程度にとどまり、花角氏の就任後はまだ開かれていない(8月下旬時点)。花角氏は柏崎刈羽6、7号機の再稼働について「検証作業が終わるまでは議論しない」と繰り返し、検証作業に要する期間についても「おしり(期限)を切らない」とし、長期化する公算が大きくなっている。
 東電は6月に福島第2原発(福島県)の廃炉検討方針を表明し、保有原発は柏崎刈羽だけとなる見通し。経営再建における柏崎刈羽の位置づけは一段と大きくなるが、肝心の再稼働への道筋は不透明なままだ。(経済本部 森田晶宏)
 柏崎刈羽原子力発電所 東京電力が所有し、新潟県柏崎市と刈羽村にまたがって立地する。福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉。計7基あり、総出力821万2000キロワットは世界最大規模で、東電は6、7号機の再稼働を経営再建の柱に位置付ける。原子力規制委員会の審査では、設備や機器の安全性のほか、事故を起こした東電に原発事業者としての適格性を認めるかが議論となった。平成29年12月に審査に正式合格し、再稼働するのに必要な「地元同意」を立地自治体から得られるかが焦点。