SNSで集団自殺…「つながり」を支援の糸にできないか 30自治体が相談事業 - 産経ニュース

SNSで集団自殺…「つながり」を支援の糸にできないか 30自治体が相談事業

 今年7月、東京都江戸川区の民家で死亡しているのが見つかった男女5人が、会員制交流サイト(SNS)で知り合い、会ってから数日のうちに命を絶ったとみられることが分かった。1人では不安を抱えきれず、最後につながりを求めたSNS。その「つながり」を支援の糸にすることはできないか-。夏休み明けの時期は若年層の悩み相談が増えるとされており、多くの自治体がSNSを活用した相談事業に乗り出している。
書き込みに反応
 7月11日、午後7時半。家路を急ぐサラリーマンや学生が行き交うJR新小岩駅(東京都葛飾区)。その雑踏の中に、5人はいた。
 《#自殺》
 江戸川区に住む男性(37)は、キーワード検索の記号「#(ハッシュタグ)」とともに、ホームセンターで購入した練炭の写真などをツイッターに投稿。書き込みに反応し、関東近郊から20代の女性2人を含む男女4人が集まった。
 5人は駅近くでワゴンタイプのタクシーに乗り込むと、4キロほど離れた住宅街で降車。付近の防犯カメラには、男性宅方向へ向かって路地を並んで歩く5人の様子が写っていた。
 遺体は、その2日後に見つかった。
 将来への不安や、経済的困窮-。それぞれが悩みを抱えていた。
 《そっとしておいてください》
 男性は直前、家族に「LINE(ライン)」でメッセージを送っていた。警察官が現場に駆けつけた際、男性がかわいがっていたという猫が1匹、台所のテーブルにぽつんと座っていた。近くには水やエサが準備してあったという。
事件にも発展
 同様のケースは過去にも発生している。
 昨年7月には、東京都八王子市の駐車場で10~20代の男女4人が車内で練炭による自殺を図り、火災が発生して2人が死亡、2人が負傷した。4人に面識はなく、SNSで知り合ったとみられる。
 昨年10月に神奈川県座間市のアパートで9人が遺体で見つかった事件では、SNSで自殺願望を書き込んだ若者らが標的となった。事件では、逮捕された男がツイッターで「一緒に死のう」などと被害者らを誘い出していたことが明らかになったが、以降もこうしたSNSへの投稿が悪用され、犯罪に巻き込まれるケースは後を絶たない。
 ネット上の問題に詳しい神戸大大学院の森井昌克教授(情報通信工学)は「見ず知らずの者同士が短期間に結びつくのはSNSの特徴。非公開の場で個別のやりとりも可能なため、会話するのと同じような速度で話が進む」と指摘。家族や友人などには反応が怖くて話せないようなことも、「『共感』をベースに匿名で相手とつながるSNS上では、安心して打ち明けやすい」と説明する。
相談倍増
 政府は座間市の事件などを受けて、今年度からSNSを活用した自殺防止対策の推進を本格化。文部科学省などによると、8月時点で少なくとも30自治体がLINEや通報アプリなどを利用した相談事業に取り組んでいる。
 静岡県では今夏、LINEの相談窓口を開設した。県内の高校生ら11万人を対象に、相談窓口の「QRコード」を印字したうちわなどを配布。相談には自治体から委託を受けた臨床心理士などが対応し、緊急性の高いメッセージには警察と連携して対応する。
 長野県では、昨年9月に試験的にLINE相談窓口を設置したところ、2週間で1500件を超えるアクセスがあった。相談件数は547件で、前年度1年間の電話による相談件数の倍以上に増加。今年は7~9月の60日間に期間を拡大し、相談を受け付けている。
 一部の自治体では、「死にたい」といった言葉をインターネットなどで検索した際、広告として地域の相談窓口を表示する「検索連動型」の取り組みも進む。
 森井教授は「悩みを抱えた人と初期の段階で、何らかのコミュニケーションをとることが重要。SNSを積極的に活用していくべきだ」としている。