ネット予約が難しすぎる「伝説の家政婦」の正体は? レシピ本も話題 - 産経ニュース

ネット予約が難しすぎる「伝説の家政婦」の正体は? レシピ本も話題

東京都内の自宅で「鶏の照り焼き丼」を調理するタサン志麻さん(石井健撮影)
東京都内の自宅で「鶏の照り焼き丼」を調理するタサン志麻さん(石井健撮影)
東京都内の自宅で「鶏の照り焼き丼」を調理するタサン志麻さん(石井健撮影)
東京都内の自宅で「鶏の照り焼き丼」を調理するタサン志麻さん(石井健撮影)
東京都内の自宅で「鶏の照り焼き丼」を調理するタサン志麻さん(石井健撮影)
東京都内の自宅でタサン志麻さんが作った「鶏の照り焼き丼」(石井健撮影)
「フランスの家庭料理の温かさをこれからも伝えたい」と語る伝説の家政婦ことタサン志麻さん(石井健撮影)
伝説の家政婦、タサン志麻さんによる「志麻さんの自宅レシピ」(講談社)の表紙
 「伝説の家政婦」と呼ばれる女性がいる。タサン志麻(しま)さん(39)。家事代行を仲介するウェブサイトで依頼が殺到し、なかなか予約ができないことからいつしかそう呼ばれるようになった。「作り置き料理」の手際の良さが人気の秘密だが、伝説の家政婦とは何者か。
4・99
 一定期間分をいっぺんに作り、これを冷凍・冷蔵保存などし、後日食べるのが作り置き料理。常備菜のことだ。日々の調理の手間が省けるので、忙しい主婦らにはありがたい。
 志麻さんは、3時間で1週間分の常備菜を作り上げる。おいしいうえに、密閉容器に収まるたたずまいも美しい。
 仲介サイトには絶賛するコメントが多数寄せられ、依頼主による評点は4・99点とほぼ満点だ。
 常備菜などのレシピをまとめた書籍も好評で、テレビでも引っ張りだこになってきた。
一念発起
 実は志麻さんは、フレンチの料理人なのだ。
 大阪の調理師専門学校のフランス校を卒業。フランスの有名レストランで研修し、帰国してからは東京都内のフランス料理店で働いた。迷いが生じて1年半ほど食品会社の研究室に勤める寄り道もしたが、最後には料理しかないと悟った。
 料理人になってほぼ15年を数えたとき、フランスの家庭料理を極めたいと一念発起し、渡仏のため店を辞めた。
静かな食卓・温かい食卓
 志麻さんから見ると、日本のフランス料理店は堅苦しすぎた。留学中、ホームステイ先で体験したフランスの食卓は、家族で囲み、にぎやかで、とても温かかった。
 「私は少し変わった子供で、家族とはあまりしゃべらなかった。会話が弾む食卓の記憶がないから、フランスの食卓に憧れたのかもしれません」
 どうすれば、フランスの「温かい」家庭料理が再現できるのかは、料理店で働いていても分からなかった。
計画断念
 店を辞めたものの先立つものがなかったので、都内の焼き鳥店で働いた。その店は、従業員の9割がフランス人という変わり種。志麻さんにすれば、渡航資金を集めながらフランス人の知り合いを作ることができる絶好の場所だった。
 だが、恋が志麻さんの計画を狂わせた。店で出会った15歳下のフランス人青年と結婚した。妊娠して、渡仏は断念した。
 そこで志麻さんが思いついたのが、家事代行の仕事だった。日本にいるフランス人家庭に呼ばれて料理に接することもあるだろう。妊娠中でもできるのではないか。
 平成27年の暮れ、仲介サイトに登録した。「伝説の家政婦」への第一歩だが、まだ「私は何をやっているんだろう」と悩んだりしていた。年が明けて、流産した。
しゃにむに働いて
 志麻さんは、家事代行の仕事を続けた。「お子さんのいるお客さんが、私の気持ちを察してくれ、救われました」。レストランで働いていたら、違ったかもしれない。
 依頼を受ける作業内容から「掃除」を外した。「料理」「作り置き(料理)」「買い物」と料理関係に絞った。そして、1日3軒の掛け持ちをするなど、しゃにむに働いた。
 「作り置き」の依頼が多かった。フランス料理では大鍋で4日分を作って保存し、少しずつ食べるなどする。常備菜作りは得意だ。
 仲介サイトで、好評価の投稿が増えて、「予約の取れない伝説の家政婦」の誕生だ。
おいしいね
 常備菜を喜ぶ依頼主の顔を見て「私は、これがやりたかったんだ」と確信した。
 「家族がゆっくり食事をしながら『おいしいね』と言える時間が1時間でも取れたら、人はどんなに忙しくても幸せを感じられる。フランスで学んだことを今、形にできている」
 3年前、東京都葛飾区の築60年の一軒家に引っ越した。リフォームでレトロモダンの雰囲気漂う自宅で、夫と1歳3カ月の長男、2匹の猫に囲まれ、レシピ本の執筆などにあてる時間が増えたが、今も仲介サイトへの登録は続けている。週3件の依頼は受けている。
 「本を出すなど発信方法は変わっても、フランスの家庭料理の『温かさ』を伝えたい気持ちに変わりはありません」(文化部 石井健)
 タサン志麻(たさん・しま、本名・志麻=しま=・タサン) 昭和54年、山口県長門市出身。辻調理師専門学校の上級校である辻調グループフランス校卒。著名レストラン「ジョルジュ・ブラン」で半年間研修。帰国して東京のフランス料理店で働いた後、家事代行のマッチングサイト「タスカジ」に登録。アカウント名は「志麻」。作り置き料理が好評で引く手あまた。予約が難しく「伝説の家政婦」と呼ばれる。著書に「予約がとれない伝説の家政婦が教える魔法の作りおき」(主婦と生活社)、「志麻さんのプレミアムな作りおき」(ダイヤモンド社)など。
 「志麻さんの自宅レシピ」(講談社) 9月25日発売の新しい著書は、常備菜ではなく志麻さん自身の家庭料理のレシピ集。担当編集者は志麻さんが自宅で作る常備菜のレシピ集を狙ったが、志麻さんは自宅では作り置きはせず、毎日、30分以内で調理できる料理を作っていた。そこで、自宅レシピを公開することになった。