「日本版シャトル」民間構想 宇宙への観光旅行、6年後にも出発

クローズアップ科学
2028年の商業飛行を目指す民間宇宙船の想像図(スペースウォーカー提供)

 宇宙への観光旅行が日本でも現実味を帯びてきた。東京都内のベンチャー企業が先月、構想を明らかにし、愛知県の企業も2024年の商業飛行を目指す。先行する米国では年内にも有人での試験飛行がスタート。海外旅行のような気軽さで宇宙に行ける時代は、目前に迫っている。(小野晋史)

4分の無重力体験

 宇宙技術者らで作るベンチャー企業「スペースウォーカー」(東京都)は8月、高度120キロの宇宙空間を目指す宇宙船の商業飛行を28年に始めると明らかにした。

 機体は乗員2人、乗客6人の計8人乗りで、11年に退役した米スペースシャトルに似た形状だ。飛行機のように滑走路から離陸し、新型のロケットエンジンで急上昇。離陸から3分ほどで高度100キロ以上の宇宙空間に到達する。

 宇宙を2分半ほど飛行した後、地球の重力に引かれて大気圏に再突入。グライダーのように滑空しながら着陸する。軌道は弾道ミサイルのような弧を描き、地球の周回はしない。飛行時間は20分弱で、無重力を体感できるのは上昇・降下時を含め4分ほどだ。客室にはアクリル製の窓が多く設けられ、地球の丸さや漆黒の宇宙を実感できる。

 機体は主に軽くて丈夫な炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製で再使用でき、大気圏再突入時には数百度の高温に耐える。エンジンは、安価でタンクも小さくて済む液化天然ガス(LNG)が燃料だ。

 ただ、人を乗せる宇宙船は極めて高い安全性が求められる。1千億円とされる開発費などの調達も大きな課題で、険しい道のりが待っている。同社創業者の一人である九州工業大の米本浩一教授(航空宇宙工学)は「無人機の開発を先行させて技術の信頼性を高め、資金調達にもつなげていきたい」と意気込む。

米は年内にも試験

 宇宙旅行を掲げる日本企業は他にもある。「PDエアロスペース」(名古屋市)は大手旅行代理店エイチ・アイ・エスやANAホールディングスなどの出資を受け、24年半ばの商業飛行を目指す。

 「ペガサス」と名付けた機体は全長17メートルほどで、乗員乗客は計8人。開発中のエンジンはジェット式とロケット式を切り替えられる。離陸後しばらくはジェット機のように飛行し、高度15キロでロケットエンジンに切り替えて宇宙空間へと急上昇。降下後は再びジェットエンジンで滑走路に向かう。

 飛行時間は約1時間半で、うち無重力は5分ほど。緒川修治社長は「地球を外から見ることは『戦争や環境破壊は駄目だ』と考え、地球を守ることにつながる」と話す。

 一方、海外では米国のベンチャー企業が大きく先行しており、2社が年内にも有人での飛行試験を始める勢いだ。

 ヴァージンギャラクティックの有人宇宙船「スペースシップ2」は、04年に民間として世界で初めて宇宙空間に到達したスペースシップ1の技術を活用。離陸時は別の航空機に抱えられ、上空で切り離してロケットエンジンを噴射し、宇宙空間に向かう。

 ブルーオリジンの「ニューシェパード」は6人乗りのカプセル型だ。ロケットで宇宙に向けて打ち上げられ、帰還時はパラシュートで地上に戻る。

「技術の継承を」

 かつては日本も将来の有人化を視野に入れ、再利用可能な無人シャトルを開発していた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の前身である旧宇宙開発事業団などが1993年に始めた「HOPE(ホープ)-X」計画だ。

 H2Aロケットで打ち上げ、高度約200キロで地球を1周してマッハ25で大気圏に再突入し、南太平洋の島に着陸する構想だった。2000年度の打ち上げを目指し、再突入や自動着陸などの実験を重ねたが05年に中止された。

 開発に携わった米本教授は「せっかく蓄積した技術が途絶えないように、新しい世代につなげたい」と民間宇宙船開発の意義を強調する。

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 民間宇宙船による宇宙旅行は、米スペースシップ1の初飛行で機運が盛り上がり、今では日本からも申し込める。代表的なのが大手旅行会社「クラブツーリズム」(東京都)で、後継機のスペースシップ2の搭乗予約を受け付けているほか、不定期で説明会も開いている。

 2004年に開始してから全世界で約700人、うち日本から20人が申し込み済みだ。搭乗は原則として受け付け順で、いま申し込んだ場合、商業飛行の開始から2、3年で搭乗できる。

 気になる費用は、約2時間の飛行で25万ドル(約2800万円)。搭乗前の訓練費も含まれるが、日米の往復交通費や宿泊費などは自己負担。高額だが、普及すれば値下がりする見通しだ。

 米ニューメキシコ州の砂漠に設けた民間宇宙港で離着陸し、宇宙空間に滞在するのは4分間ほど。上昇時に体重の3・5倍、下降時に同6倍の力がかかるといい、搭乗できるのは18歳以上の健康な人に限られる。

 日本のスペースウォーカーの搭乗費用は未定。PDエアロスペースは1700万円を見込んでいる。