対米貿易戦争で「カモられる」と脅える中国人消費者 そのワケは…

田村秀男のお金は知っている
中国人の海外旅行者数と支出の推移

 長期化の様相を深めている米中貿易戦争について、中国の消費者はどんな感想を抱いているのか、上海の知人に聞いてみたら、かなり深刻な感想を抱いていた。「対米報復のために米国からの輸入を制限する分、他の国からの輸入に頼らなければならない。すると、足元をみられる」と心配する。(夕刊フジ)

 何事も方便と計算にたけた中国人がたやすくだまされるとは信じ難いと、きつく切り返したら、知人は怒りもせず、最近の事例をいくつか挙げてきた。

 今年4月にはスペインの警察当局が偽粉ミルクの対中輸出業者を摘発した。ポーランド産の偽原料をスペインの缶工場で有名ブランドの粉ミルク缶に詰めて、600グラムあたり10ユーロ(約1300円)で中国向けに大量出荷していた。摘発したのは8トン、1万数千缶分だが、すでにはるか大量の偽物ミルクが中国で出回った。有害物質は含まれていないが、栄養価ゼロなので、飲まされた乳児の健康が懸念されている。

 「金持ち中国人」が海外でカモにされるケースは続出している。中国の現預金総量は急膨張を続け、現在では約3000兆円に上る。国民1人当たり約230万円と日本の同780万円には及ばないが、金融資産を持っているのは中間層以上で、その数は2億人前後で、1人当たり現預金は2000万円以上と推計できる。その中国人中間層以上の間では、海外旅行がブームだ。

 グラフは中国人の海外旅行(アウトバウンド)とそれに伴う支出の動向である。延べ人数は2014年に初めて1億人を突破し、17年には1・3億人超、そして今年前半は前年同期比で15%増と旅行ブームが加速している。このペースで行けば今年は1・5億人を超え、旅行支出額も1300億ドル(約14兆3000億円)以上に増える勢いである。

 この巨大購買力に目をつけて日本を含む各国が中国人旅行者を大歓迎しているわけだが、偽物をつかまされたり、他の外国人向けよりも数倍以上の高い値段を払わされるケースが目立つ(日本については信頼性が高く、中国人旅行者の間では評判が上々だ)。

 知人によれば、韓国への旅行者が有害物質入りの偽化粧品を高い値段で買わされた。ロシアに団体ツアーで行くと、旅行社差し回しの案内人にロシア名産の琥珀(こはく)製品店に連れて行かれ、市価の数倍も高いものを買う羽目になった。タイへの団体ツアーに行くと、国際的に知られた名所に連れて行かれず、もっぱら案内されたのは他の外国人旅行者がだれも来ない「中国人向け専用」と称する土産物店で、他の観光客用店の値段を比較できる情報を遮断された。

 習近平政権は対米貿易報復のために、中国の総需要の3分の1を占める米国産大豆の代替輸入先を見つけなければならないが、下手すると石ころや土砂交じりの大豆を買わされるのではないか、と知人は恐れる。もっとも、そんな偽物騒ぎは中国国内では日常茶飯事なのだがね。(産経新聞特別記者・田村秀男)