光沢なくごわごわ…頭だけ幼虫のクワガタを千葉県立農業大学校が公開 ピンク色のバッタなども

 
頭部だけ幼虫の時のままの形状で羽化した「トカラノコギリクワガタ」の雄(上)とピンク色をしたバッタ「クビキリギリス」(下)

 頭だけ幼虫の形態をとどめた「トカラノコギリクワガタ」の雄を、飼育する千葉県立農業大学校(同県東金市)が8月27日に同校体育館で開いた昆虫展示会で公開した。雄特有の大きな顎がない姿は一見雌のクワガタのようだが、頭は光沢がなく、ごわごわした質感は幼虫の体表のよう。他に突然変異で体がピンク色をしたバッタなども展示され、会場は大勢の子供たちでにぎわいを見せていた。(白杉有紗)

 頭だけ幼虫の形態で羽化したのは、体長約3・5センチのトカラノコギリクワガタの雄で「頭部蛹化(ようか)不全」という頭部のみ脱皮がうまくいかないまま外骨格が形成されてしまったことによる奇形。頭部の奇形は餌を採取するのが難しく、9割以上は死んでしまうため生きているものは大変貴重。今回の個体は、餌を採取するブラシ状の舌が形成されていたため、餌を食べて生き続けることができたという。

 実際に見てみると、本来は成虫になると両サイドに離れるはずの目が幼虫の時のまま中央にある。また、大顎がないことに気づいていないのか、前足で顎をなでるようなしぐさを見せ、かわいらしく思えた。

 展示会は午後2時開始予定だったが、開場前から約100人が詰めかけたため、10分ほど早めてスタート。頭が幼虫の形態をしたクワガタとともに、来場者の人気を集めていたのが体の隅々までピンク色をしたバッタ「クビキリギリス」で、その姿を一目見ようと30分ほど待った来場者もいた。

 同校の学生が昨年8月下旬に東金市内の田んぼで1匹をみつけ、同校の温室で飼育。バッタはもともと「緑」「茶」「ピンク」の3つの色素を持っているが、敵に見つからないように環境に合わせて緑色か茶色で生まれてくるのがふつうで、ピンク色になる確率は1000分の1未満という。

 このバッタは雌で、今年7月から8月上旬にかけて12匹のピンク色の子供たちを“出産”。交尾をしないで雌のみで子供を産む「単為生殖」で繁殖したものとみられ、同校の清水敏夫准教授は「ピンク色の親同士を掛け合わせてピンクのバッタが生まれた例は過去にあるが、単為生殖でピンク色の子供が生まれた事例は聞いたことがない。ピンク色の遺伝子は劣勢のはずだが、今回のことで突然変異で生まれたピンク色の体色が受け継がれることが証明された」と話す。

 今回の展示会では展示3日前に同県茂原市内の公園で発見されたピンク色の「ヒナバッタ」も初公開された。捕まえた千葉市緑区の今井隼之助君(3)と兄の優之介君(8)も会場を訪れており、「たまたま遊びに出かけた公園で、草の上にいるのを見つけた。ピンク色だったのでびっくりした」と発見当時の様子を話してくれた。

 このほか、トカラ列島中之島(鹿児島県十島(としま)村)に生息し、現在は乱獲により採集が禁止されている貴重な小型クワガタ「ナカノシマネブトクワガタ」(体長約16ミリ)も展示会では手にとって観察することが可能だった。

 日本一小さいクワガタとされる、米粒サイズの「マダラクワガタ」(体長約4ミリ)も実際に指の上に乗せて虫眼鏡を使って観察することができ、初めは固まって動かなかったものがその後、活発に動き回る様子が面白かった。

 今回の展示会について清水准教授は「珍しい昆虫になるべく直接、触れてもらいたかった」と話す。

 清水准教授は、以前高校で教師をしていた時に昆虫の絵を正しく描くことができない生徒たちに非常に驚き、子供たちの「昆虫離れ」を危惧していた。そこからなるべくガラスなどを通さず直接目で見て、昆虫の立体感を感じられる展示を提案したという。

 来場した子供たちは汗をかきながら一生懸命に昆虫を観察し、中には「初めて昆虫に触った」という子もいた。清水准教授は「昆虫が腕などにへばりついて離れない場合は、お尻を触ると移動するよ」と昆虫の正しい扱い方なども子供たちと触れ合いながらレクチャーしていた。

 茂原市から母親と兄弟4人と一緒に来たという松本蓮(れん)君(6)は、「(世界最大のカブトムシである)『ヘラクレスオオカブト』がかっこよかった。見たことのない昆虫がたくさんいてびっくりした」と興奮気味に話していた。

 展示会は午後3時半すぎに終了。同校によると、最終的な来場者数は300人を超えたという。